第21話《思い》
放課後になり、屋上で渡部さん達が来るのを待つ。
覚悟を決めたと言っても、やっぱり緊張する。
言っても、俺のこと、嫌いにならないでくれるだろうか。
もっと仲良くなれるだろうか。
色々な不安が俺の中を渦巻く。
でも、俺は選択したんだ。
言葉にするって。
決めたからには、最後までみっともなく足掻いてみせる。
「お待たせ〜。言われた通り香織連れてきたよ」
「こ、こんにちは……」
「おう」
「それで?話って何かな?」
「……俺が、どう思ったかの話だ……」
「ああ。昨日の?あれならもういいよ」
「……は?」
い、言わなくていい!?
なんで!?何があったんだ!?
せっかく覚悟を決めてきたのに!?
これじゃああれだけ悩んだ俺が馬鹿みたいじゃねえか!!
「いやー、香織がさ、柳くんが嫌なことを無理やり言わすのは良くないって言ったから。僕も確かに、って思ったし」
「そ、その……聞きたいんですけど……私達のことを嫌いになったってわけじゃないんですよね……」
「え?そ、それはもちろん……」
「はぁ〜……良かった〜……嫌われたかと思ってヒヤヒヤしてたんです。」
「ほんと、良かったよ〜僕も柳くんとは仲良くやっていきたいしね」
渡部さんも、嫌われたかもって思ってたのか……
渡部も、仲良くなりたいと思ってたのか……
嬉しい……
嫌われたくないと、思ってくれているってことでいいんだよな……
もっと仲良くなりたいって、思ってくれているってことでいいんだよな……
本当に、嬉しい……!
……俺も、伝えよう……
嫌われたくなかったって……仲良くなりたいって……
「俺も、二人に嫌われたかと思ってた。自分の本当の気持ちを、言わなかったから」
「え?そ、そうなんですか?」
「ああ……色々考えたけど、俺は、二人に嫌われたくないと思った。もっと仲良くなりたいと思った。だから、全てを話す覚悟を持ってここに来た。でも、二人は言わなくていいって言ってくれた。それに、嫌われたくないとも、仲良くなりたいとも……。同じだった……。俺たち、同じだったんだ!だからこれからも、俺と仲良くしてほしい。いや……今以上に仲良くなりたい!!」
言えた……
予定していたこととは全く違ったけれど、俺は、たった今二人に言いたいことを、全部ぶつけた。
「……ありがとうございます。こちらこそ、仲良くしてください」
「……うん……ありがと……これからもよろしくね!」
「っーーーー!!ああ!!よろしく!!」
俺は涙目で、しかし今までで一番嬉しい気持ちで頷いた。
もっとも、肝心の二人は全く違わない戸惑いの表情で、目を白黒させていたけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます