女の子を好きになったことがない俺が初めて恋をした

第8話《彼からの提案》

「そ、そうなのか……」

「うん……だから、僕のどこが可愛かったのか教えてほしいんだ……変わりたいから」

「そうか……でも、どこって言われてもな……」

正直に言ってしまうと、すべてだと思う。

顔も、性格も、仕草も、全部が可愛くて仕方がない。

でもこれらは、変えようと思って変えられるものじゃない。

「……お前は男らしくなりたいのか……？」

「え？う、うん。僕は可愛いじゃなくてかっこいいって言われたいんだ。だって、男だから」

「……分かった。手伝うよ」

「え！？手伝ってくれるの！？」

「ああ」

「柳くん、ありがとう！そうだ！柳くんも何か悩みとかない？僕も柳くんの力になりたいんだ！」

「悩みか……」

悩みならある。

いままで恋をしたことがなかった俺が初恋をしたと思ったら、その人は男だったという悩みだ。

でもそのこと本人に相談するなんて恥ずかしすぎる。

渡部を手伝うというのもこの過去を引きずらないためだ。

「いや、大丈夫だ。気にするな」

「そう？……あっ！そういえば僕以外に可愛いって思ったことないって言ってたよね！？それって大丈夫なの！？」

そういえば、慌ててそんなこと言ってしまったような気がする。

って何言ってんだよ俺！！

「あ、ああ……だ、大丈夫だ……全然気にしてないから……」

「いや、絶対気にするでしょ！？じゃ、じゃあ……恋ってしたことあるの？」

まずい！

考えられる限りで最悪の質問が来た！

正直に言ったら絶対に引かれる！

「い、いや……ない……かな」

「そ、そうなんだ……可愛いと思ったのも僕以外いないの？」

「あ、ああ」

「そ、そっかぁ……って女の子を可愛いって思ったことない人に可愛いって言われるって僕、そんなに可愛いのかぁ……」

「なんか……ごめん」

「気にしないで……そうだ！柳くんが女の子を好きになれるように協力するよ！」

「は？」

「だから！僕が柳くんに協力して、柳くんが僕に協力する。これでいいでしょ？」

「あ、ああ……分かった……で、でも具体的には何をすればいいんだ？」

「それは……やっぱり可愛い女の子とデートするとか……あっ！柳くん！僕は可愛いって思ったんだよね！？」

「お、おう……そうだけど……それがどうしたんだ？」

「そっか……それなら……ねぇ！明日のテストが終わった後、ここに来てくれる？紹介したい人がいるからさ！あ、あと僕の悩みの事も考えておいてね！じゃあ、また明日！テスト頑張ろうね！」

「え、いや、ちょっと待て……ってもう帰ったか」

協力してくれると言ってくれたが正直複雑な気分だ。

っていうかどんなふうに協力してくれるのだろうか。

しかし、最後に見せた笑顔……やっぱり可愛かったな……

って俺はまた何を考えてるんだ！渡部は男だろうが！

あんな可愛い渡部を男らしくするってどうすればいいんだよ……

「はぁ……帰るか……」