第18話《親友への隠し事》

……朝が来た……

今日からまた学校か……

いや、それよりも渡部にデートのことを報告しなければいけない方が嫌だな……


「はぁ……」


「ちょっとお兄ちゃん。起きてきていきなりため息つかないでよ。幸せが逃げちゃうよ?」


「ああ……悪い……」


「ほら、さっさとご飯食べて行かないと間に合わないよ?お兄ちゃんは起きるの遅いんだから急がないと」


「そうだな。じゃあ、さっさと食べて行くわ」


「うん。行ってらっしゃい」


朝飯を食べ終わり、駅に向かう。

……シンには絶対にデートのことは言わないようにしよう。

言った時点でどうなるのかは予想がついている。

どうせからかわれるに決まってる。


「お!おはよう!ユウ!」


「ああ。おはよう」


「今日から普通に学校だな。頑張っていこうぜ。特にお前、テスト悪かったんだろ?」


「あ、ああ……まあな……」


「珍しいよな。お前が単純なミスするなんて」


「あの時は、調子が悪かったし……仕方ない」


「ま、そうだな。終わったことだしな」


言えない……

あの時はデートが決まった次の日で、まだ動揺していて勉強に集中できなかったなんて……


「お、電車来たな。乗ろうぜ」


「ああ」


「で?聞けてなかったけど初恋どうなったんだ?前にはあんなこと言ったけどやっぱり気になってさ」


まずい……!

この質問は正直に答えてはいけない……!

そもそも男か女かも分からないなんて言えない……!

っていうかその前に会ったっていう事実すら言っちゃだめだろ!


「い、いや……何も進展なしだぞ……そもそも会ってすらない……」


「そうか……まぁ……頑張れよ……」


うっ!

そんな顔をされると嘘をついてしまったという罪悪感が半端ない。


「俺は応援してるからな!ユウ!」


「あ、ああ……ありがとな……」


やめてくれ……!

本当に精神が抉られるから……!


「お、千葉駅着いたな。降りようぜ」


「……ああ……」


……本当すまない……シン……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る