第32話 ジャイアントキリング作戦


 ――ジャイアント・キリング作戦決行当日


「よし、みんな集まったか?」


 俺たちはラグーンズ第二研究所前の森に身を潜ましていた。


「手順は分かっているな? 研究所内に潜入後、ヒューマンレティクルを作り出しているハイパーコンピューターの停止及び破壊。息をしている生徒たちは保護をする。次にアイリスプログラムの停止だ。これは剣人、お前がいなきゃ成し遂げられないミッションだ。お前を殺されるわけにはいかない」

「わ、分かっているよ。俺は待機だろ?」

「ああ、悪いが三人には命を懸けて貰うことになる。それでも大丈夫か?」

「ええ、私は問題ないわ」

「任せてくださいっ!」

「ここまで来て逃げたりしませんよ、ダイスケさん」

「ふっ……頼もしい子供たちだ。剣人、お前は俺と行動だ。異論はないな?」

「ああ、問題ない」


 そして時は経ち、決行予定時間五分前になった。


「カウントゼロとともに一斉に潜入だ。構造、位置関係の最終確認は大丈夫か?」


 三人は縦に頷く。

 準備は整った。いよいよ全てを終わらす決戦が始まる。


 俺たちは息を潜め、その時を待った。


「時間合わせいくぞ、60、59、58……」


 そして――その時が来る。


「5、4、3、2、1、突撃!」


 ゼロのカウントと共に大きな爆発音が聞こえた。

 どうやら残り二つのブロックも潜入できたようだ。

 俺たちはそのまま作戦通り行動を始め、遂にジャイアントキリング作戦が決行された。


 ――研究所内拘置所。


「やれやれまさか君に一本取られるなんて思わなかったよ。あのカード―キーがフェイクだったなんて」

「國松……貴様どういうことだ」

「君が来ることは重々承知の上だった。奥まで潜り込めたからバレていないとでも思ったかい?」


 拘束され、身動きが取れない状態で会長は話す。


「お前たちは何がしたい? 学園に金を渡して殺戮を隠蔽してでも成し遂げたいこととはなんだ?」

「それは答えるわけにはいかないな。君も分かるだろう?」

「くっ……」

「今は大人しくするしかないわ。翼ちゃん」

「うっ……そ、そうですね」


 すると一人の研究員が國松の所へ。


「ほう、来たか」

「何をするつもりだ!」

「ちょっと侵入者らしいのでね。彼女たちのことは君に任せるよ」

「分かりました。國松副所長」


(副所長……だと?)


 國松は研究員に任を託し、その場から消える。


「うふふ、金山君たちかしら?」

「金山……? そうか……そういうことか。香恋先輩、私たちも此処を抜け出しますよ」

「ええ、分かってるわ」


 ――ラグーンズ第二研究所、コンピュータールーム。


「よし、ここだな。みんなやるぞ」

「ええ」


 予め元研究員の助言を聞き、スーパーコンピューターのセキュリティを停止させる。そして次々に破壊していく。


「ここを破壊し終わったら学園の生徒たちの保護だ。まだ生きている人もいるかもしれない」

「分かったわ」

「りょーかい!」


 こちらは順調のようだ。


 俺とKDこと父はアイリスプログラムの防衛ラインで立ち止まっていた。


「くっ! 侵入者への対処が迅速だったな。もう固めていやがる」

「どうする? このまま突っ込んでいってもハチの巣だ」

「いや、行ける」


 えっ……と思った時横の壁から勢いよく元エリート軍人部隊が姿を現した。


「ここはマカセロ、オマエたちはイケ!」

「ありがとよ、マックス!」

「へっ、イイってことよ」


 俺たちは彼らの助力もあって、次々と防衛網を突破していった。

 そして遂に亜理紗のいるアイリスプログラムの中枢へと着くことができた。


「よし、剣人。ここからお前の出番だ。頼むぞ」

「あ、ああ……やってやる」


 俺はゆっくりとプログラムの制御機器へと近づく。

 すると、


「そこまでにしていただこうか?」

「ちっ! 思ったより早かったな」


 そこに立っていたのはこのラグーンズを手中に収め、月徒の民という犯罪組織をまとめ上げている男、城岩と見たこともない老人だった。


「あいつは……?」

「あいつは此処の最高責任者兼月徒の民の本部長、いわゆるトップだ」

「そうか……じゃああいつが……」

「ああ、首謀者だ」


 そして背後からもう一人の足音がコツコツと聞こえる。


「今度はなんだ?」

「ん? あれ金山君じゃないか」


 話しかけてきたのは生徒会副会長、國松彰吾だった。


「く、國松先輩!? こんな所で何してるんですか?」

「い、いや……研究資料を取りに来ていてね。金山君の姿があったから見に来たんだよ」

「そ、そうなんですか!」


 俺は何も知らずに彼に近寄る。


「おい、剣人! それ以上近づくな、これは罠だっ!」

「えっ……」


 俺が振り返った途端、國松の姿は俺の真下に。

 そして彼は右手に潜めていた軍用ナイフを手早く取り出すと、俺の腹部をめがけて刃を突きだした。

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