第7話 クラス委員長として


 昼休みが始まるチャイムが鳴り響く。


 俺は購買部でパンと飲み物を買い、屋上へ向かおうとした時、前から白峰さんの姿が見えた。


 周りの人は白峰さんに釘付けだ。

 まぁ、そりゃそうだ。


 あんな美少女誰もが二度見するだろう。

 そんな人と一緒に登校しているなんてひと昔前の俺じゃ想像もできない。


 すると白峰さんが俺の存在に気がついたようで、


「あら、金山くん。いまからお昼? よかったらご一緒してもいいかしら?」

「え、俺と?」

「ええ、何か不満でも?」

「い、いや全然! むしろお願いしますというかなんというか……」


 まさかの誘い。正直めっちゃ嬉しいのだが一つ気がかりな点があった。


 それは周りの男衆が「なんだ彼氏いんのか」みたいな目で俺を見てくることだ。

 殺意の目とはこのことでその場の空気がガラリと変わる。


(うわ……嫉妬のオーラすげえ~)


 だが白峰さんはそんなことには全く反応せず、「じゃあ、行きましょう」とクールな返答で先を歩いていく。

 その姿を見ると、ビビっている自分が情けなく思えてきた。


(や、やっぱすごいな……あの人)


 それともこういう状況に慣れているのだろうか?


「金山くん? どうしたの、早く行くわよ」

「あっ、うん。今行くよ」


 ま、そんなことはどうでもいいか。


 とりあえず今は白峰さんとのお弁当タイムだ。とことん楽しませていただこう。

 

 俺は少し邪な期待を抱きつつも、白峰さんと共にとある場所へ向かった、。


 ♦


 屋上に来た。


 地下だと言うのに空もあり、風も吹く。

 まさに外といるのと全く変わらない環境だった。


「本当すごいよね。まるで外にいるかのようだよ」

「この技術に関しては本当に感銘を受けるわ。元々は宇宙に人を移民させることを可能にするための実験としてここで試しているみたいだけど」

「正直このままでも十分暮らすには申し分ないし、大丈夫だと思うけどな」

「それほど宇宙に暮らすということは甘くないのよ」


 こう話していると一人の女子生徒が屋上に来る。

 彼女は一人でベンチに腰を掛けた途端、大きなため息をついて下を向いてしまった。


「あれはクラス委員長の……」

「なにか悩んでいるようね」


 そうすると二人は彼女のところへ駆け寄ってきて、


「あの……星宮さんでしたっけ?」


 俺が恐る恐る口を開く。


「あ、はい。えっと君たちは確か……」

「同じクラスの金山剣人っていいます」

「同じく、白峰夕よ」

「あ、そうでした! 私は星宮芽久……ってもう知っていますよね」


 彼女はうちのクラスのクラス委員長だ。


 この人も凄くグラマーな人でブロンドの髪が特徴の美少女だ。


 この学園には本当に美人な人が多い。俺にとっては凄く嬉しい限りだ。


 俺たちは気になっていたことを彼女に話した。


「星宮さん、なにか悩んでいる様子だったけど大丈夫?」

「あ、うん。ちょっとこの先大丈夫かなって言う不安があってね」

「この先って学園生活の?」

「うん……私は生きて帰れるのかなとか、クラス委員長としてみんなをまとめてこの1年で一人も欠けることなく終えられるのかなとか、色々考えちゃうんだ」


 そりゃ俺だって誰よりも不安を抱えている自信がある。

 自分をごまかそうと必死だったけどやっぱり死ぬのは怖い。


 ただでさえ俺は周りの人からすれば凡人なのに……。


 こんな殺人学園で生き生きとしている方が逆に凄いと思ってしまう。


「俺も不安しかない、いや……もう怖くて逃げだしたいくらいだ」


 さらに俺は、


「でも、ここまで徹底されると最後まで頑張ってみたいって気持ちもあるんだ」

「え……?」


 星宮さんはきょとんとしている。


「不安なのは星宮さんだけじゃないよ。俺も白峰さんも何かしら不安を抱えている」


 白峰さんはうんと頷く。


「でもこれを乗り越えた先にはきっと大きく成長した自分の姿があると思うんだ。だから星宮さんもがんばろうよ。俺も困ったときには協力するからさ」

「そうよ。私も協力するわ。悩みを抱えているのは私も同じだもの」


 こういうと星宮さんは今にも泣きそうな顔で、


「ありがとう……金山君、白峰さん」


 かっこいいことを言っているが、そんな根拠はどこから出てくるか分からなかった。

 人の事より、自分のことを気にしなければならないのに俺は彼女のことを放っておくことができなかった。


「私もできる限り二人の悩みを解決できるように協力するね」


 こういうのは星宮さんだ。


「お互い頑張ろう! 力を合わせればきっと大丈夫だよ」


 何度も言うが根拠はない。


 完全実力主義で結果が決まるこの世界に協力という言葉は意味を成すのか。


 ただ今は何もこの学園のことを知らない以上、誰かと協力しないと生き延びることはできないと思った。


「あ、二人ともメールアドレス教えてよ!」

「うん! いいよ」

「構わないわ。そういえば金山くんともまだ交換していなかったわね」

「そうだったね。お願いできるかな?」

「大丈夫よ」


 こうして二人とメールアドレスを交換した。

 夢みたいだ。美少女二人とアドレスを交換するまでの仲になるとは……

 

 そしてこの後、俺たちは三人でお昼ご飯を食べた。


 ♦

 

 現状所持AP

 

 金山剣人のAP 98。

 白峰夕のAP 105。

 星宮芽久のAP 115。

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