第17話 黒い男、再び
その黒い影を追いかけると旅館のちょうど裏口に出た。
だがそこからは見失ってしまい――
「はぁ……はぁ……一体どこに行ったんだ?」
だがその時だった。
突然、左側の木の陰から聞き覚えのある声が飛び出してきたのだ。
「やあ、金山君。久しぶりだね」
「……KD!」
そう言ってあの黒い男、KDが姿を現した。
俺はKDを睨み付け、近づいていく。
「やはりお前だったか。今度は俺に何のようだ?」
「ん~特に用はないのだけど君のその後が気になってね。とっくにリタイアしているかと思ったけど結構粘っていて驚いたよ」
あざ笑うような目で彼はそう言った。
単なるブラックジョークなのか、本当にバカにしているのか。
それは定かではないが、俺の中では何かがプツッと切れた。
「なめてるのか?」
「いやいや、そういうつもりで言ったわけじゃないさ。単なるジョークだよ、勘違いしないでくれ」
KDはニヤリと笑う。
ホント、この男は前に会った時もそうだったが、謎ばかりだ。全く裏が見えない。
どこまで真実が分からないってのが不気味過ぎて気持ち悪いくらいだった。
「言いたいのは本当にそれだけか? わざわざこんな所にまで来るからにはなにかしらの理由があるのだと思っていたんだが」
俺は彼に深く問い詰めた。
するとKDは頭を抱えて笑いながら、
「いやぁ、中々鋭くなったね。入学当時の君とは比にもならないくらいの成長だ」
「質問に答えろ! 俺はお前に聞きたいことが山ほどあるんだ」
つい必死になってしまい口調が荒くなっていく。
だがKDはその漆黒のフェルトハットを深く被り、
「いや、今日はもう帰ることにするよ。今日は君がどれほど学園に馴染んできたのかを知りたかっただけだからね」
「な、なんだと……?」
「じゃ、私はこれで失礼するよ。せいぜい、システムに飲まれないように頑張ってね」
KDは俺にそう告げると、背中を向けた。
「お、おい! 待てっ!」
すると彼は立ち止まって再度、俺の方を振り返った。
「あ、そうそう。これだけはいっておくよ」
この言葉の後に数秒間の間が発生。
夏の夜風で靡く木々の音が静寂に染まったこの場所に響き渡る。
そして少し間を置いた後にKDはゆっくりと口を開いた。
「今、君がやっていることは……無意味だよ」
彼はそれだけ言い残して暗闇の中に消えていった。
俺はしばらくの間、その場所に立ち尽くし……
「無意味って……どういうことだよ……」
俺はKDの言っている言葉の意味が全く理解できていなかった。
何が無意味なのか……俺には分からなかったのだ。
でも、あの男がでたらめを言っているとも思わなかった。
何かあの言葉には裏があるはず……だと。
こうして高校生活最初の夏休みは何かの伏線を残して、終わりを迎えたのだった。
♦
金山剣人のAP 118【覗き(未遂)により―50AP減】
時宗正のAP 255 【上記と同様】
その他、増減なし。
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