第11話 生徒会
勉強会当日の放課後、俺はいつものように生徒会室へと足を運んでいた。
「失礼しま~す」
「……あら?」
生徒会室に入ると何やら見かけない女性がソファに座っていた。
(誰だ? この人……)
今まで見たことない人だ。しかも超絶美人。
可愛いというよりは美しいという言葉の方が似合う風貌を持った人だった。
(生徒会……の人なのか?)
そう考えながら扉の前でたじたじしていると、突然その女性が俺に声をかけてきた。
「ごきげんよう。あなたは確か新しく生徒会に入ったっていう新入生の子ね」
「え、あ、はい。1年の金山剣人って言います」
「早乙女 香恋(さおとめ かれん)よ。生徒会の一人で会計をしているわ。学年は三年生よ」
「三年生? 確か向郷会長と國松副会長は二年生だったはず……」
「この学園の生徒会は基本的に一、二年生が中心になって活動を行っているの。私は元生徒会長で本当は生徒会に残れないのだけどこの活動が好きで残らせてもらっているのよ」
「そうなんですか! 納得です!」
「なにか分からないことがあったら聞いてね」
「は、はい!」
名前の通りのその可憐さを振りまきながら応対する。
清潔感に満ちていて普通に話していても隙の無い人だった。
「おう、金山。来ていたか」
そんな話をしている中、入ってきたのは向郷会長だ。
「あ、翼ちゃん。お久しぶりね」
香恋さんも会長が入って来るのに気づき、すぐ視線をシフトさせる。
すると会長は早乙女先輩の顔を見るなり、目の色を変えた。
「香恋先輩!? なんでここに?」
「たまには生徒会室に顔を出そうかな~って思って」
俺は会長に質問をした。
「早乙女先輩はあまり生徒会室に来ないんですか?」
すると会長は呆れたような顔をして、
「あんた早乙女っていう名前聞いてピンとこないわけ? 彼女は早乙女 錬造(れんぞう)氏の実の娘なの」
「ま、まさかあの早乙女財閥の!?」
早乙女財閥と言えば日本が世界に誇る宇宙移民技術、またの名をコロニー化計画で世界的大実験に成功をした日本技術士界の頂点に君臨する企業だ。
その社長である早乙女 錬造博士はその計画の最高指導者としての栄誉を称え、ノーベル賞と国民栄誉賞の両方を与えられた。
向郷会長は答える。
「そうよ。しかも彼女はこの地下都市の技術者なのよ」
「技術者ということはこの地下都市を作った人ってことですか?」
「そう。しかも彼女はこの地下都市とここで進めるとある国家プロジェクトの副責任者をしているの」
「ま、まじですか……」
(スケールが違いすぎるだろ……)
「もう、翼ちゃんたら大袈裟すぎよ」
早乙女先輩が微笑みながら会長の頭を撫でた。
「やめてください。もう子供じゃないんですから」
向郷会長は頬を真っ赤に染めながら言った。
(会長にもああいう所あるんだ)
普段見られない会長の素顔をみて、俺は思わずにっこりしてしまった。
するとそれに感づかれたのか会長はこっちを向いて、
「おい、金山。なにを笑っている」
(やべ……)
「い、いえ……普段会長がそういう素振りみせたことなかったんでつい……」
すると会長は疲労を溜めた顔をして、
「はあ……もういい。話を元に戻すけど、彼女はこんな場所でのんびりしているほど暇じゃないんだ。だから生徒会長の時も基本的に研究所か家で活動していて滅多にこの場所に来ることはない。というより生徒会メンバーがまとまって集まることなんてほぼないからな」
「そ、そうなんですか……」
「私は賑やかな方が楽しいと思うのだけれど。久しぶりにみんなで集まって活動してみたいわね」
「それはそうですが……」
普段の強気でたくましい会長はどこにいったのかというくらい早乙女先輩には腰が低かった。過去に何かあったのだろうか。
「……さて、無駄話が過ぎてしまったな。そろそろ仕事をするとしよう」
「今日は書類運びでしたよね?」
「そうだ。だがその前に行かねばならない場所がある。ついてこい、金山」
そういうと会長は生徒会室の奥の部屋からカードみたいなものを取り、去り際に早乙女先輩の方を向いた。
「香恋先輩、すみません。仕事があるのでまた後程ゆっくりお話し聞かせてください」
「ええ、頑張ってね。翼ちゃん」
会長はにっこりと笑い、その場を後にした。
「おい、金山。何をしている。行くぞ」
「あ、はい。今行きます」
その声につられて俺を先輩に軽く礼をすると、その場を去った。
で、俺は向郷会長に言われるがままに、後をついていく。
「金山、今から行くところは他言無用でお願いしたい」
「一体どこに行くんですか?」
「一般生徒は入れない所だ。言ってしまえばこの地下都市の研究施設の一つだな」
「そんな所に書類があるんですか?」
「公にはできない書類もあるからな。生徒会と研究所の関係者しか触れることが許されていないのだ」
そういわれて連れてこられたのはこの学園の学園長室だった。
会長はドアをノックする。
するとドアの奥からベルがなる音が聞こえた。
恐らく入っていいとの意思表示だと思われる。
「失礼します」
彼女が重そうなドアを開けて中に入っていった。
俺も後から続く。
「し、失礼します!」
中に入ると、どこかの会社の社長室か! というくらいに装飾がいたるところに施されていた。
その時だ。学園長が座るのであろう椅子の方から聞き覚えのある声がした。
「だれかな?」
会長は一瞬の隙もなく答えた。
「はい。私は我が月花学園生徒会長、向郷翼でございます。となりにいますのは同じく生徒会、書記を務めております、金山剣人です」
「1年の金山剣人です! 今年度から生徒会書記を務めることになりました」
すると椅子がくるっとこちらに正面を向けた。
(やっぱり入学式で話していた人だ)
チョビ髭がかなり印象的であったためすぐに分かった。
「君が新たな生徒会役員なのかね?」
「あ、はい!」
すると学園長は少し意味深な笑みを浮かべた。
(ん、なんだこの感じは)
俺はその時なにかが心につっかかるのを感じた。
まるでこの人のことを前から知っているような。
「そうか。一年生ながら生徒会の活動は大変かと思うが、ぜひとも将来のために精進してもらいたい。君は選ばれし者なのだ。月花学園の生徒会役員としての誇りをぜひとも忘れないでほしい。分かったね?」
「はい! 全力でやらせていただきます!」
話の矛先は会長へ向く。
「で、今日は何の用かね?」
「例の書類を持ってくるよう依頼を受けたので取りに参りました」
「……あの書類か」
「はい」
あの書類とは何なのかさっぱり分からなかったが、大事なものであるということはすぐに分かった。
「よかろう。施設へ入ることを許可しよう」
「ありがとうございます。学園長」
そういうと学園長はこっちへ来いと俺たちを誘導した。
学園長は本棚にあった本を押し込み、それと同時に本棚であった場所に扉が出現した。
(隠し扉って本当にあったのか!)
こんな光景は映画の世界だけだと思い込んでいたので、俺は驚きを隠せなかった。
「さあ、この先が施設だ。くれぐれも余計な真似はしないようにな」
そう言って学園長は俺たちを施設内に入れた。
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