第2話 おっぱいの憂鬱、その1

 高校一年の女子高生マリンが、洗面台を兼ねたお風呂の脱衣場にいる。彼女は衣服を脱いで脱衣かごに入れ、ブラジャーを外した。

 「ん? んあ? うわわわわ、なによう!?」

気が動転したマリンの脳に、こぶしの効いたおっさんのダミ声が響く。


 あーあ♪ 乳房がねえ♪ まったくねえ♪ 二つあったがズンベラぼう♪ 

 大きくは、なかったが、それでも可愛い、つぼみちゃん♪ 

 まだまだよ、これからよ♪ さなぎが蝶に変わるのよ♪ 

 言い聞かせ、マッサージ、ところがどうした、乳首もねえ!♪ 

 オラこんな胸いやだー♪ オラこんな胸いやだー♪ ・・・♪


 彼女のおっぱいがない!

 ハッと我に返ったマリンは脱衣籠の中をかき回し失われたおっぱいを探した。

 が、ない! 頭をかきむしり、泣きそうになるのを堪え、這いつくばって落ちていないか探し回る。

 でも、ない! 彼女の可愛いおっぱいは、跡形もなく消えたのだ。

 

 あーあ♪ 乳首もねえ♪ サッパリねえ♪ 男もあるのに、まったくねえ♪ 

 どうしたの♪ へんだよね♪ チョウチョが飛んでる、ぐーるぐる♪ ・・・♪?◎?▽?


 マリンは床にへたり込んでつぶやいた。

 「意味、わからん」

 と、急にケタケタケタと笑いだす、それは一分間続くのだった。


 同時刻。この町にある、小さなパン屋さん。夜も二十時を回ったところで、中年の店主が店の後片づけをしている。

 「ふー、今日も随分と余っちまったな」

 売れ残りのパンを集めていると、棚に妙なものを見つけた彼は、それを手でつかんだ。大きなメロンパンを思わせるそれは、白地で真ん中に赤い粒がのっている。店主は小首をかしげた。

 おかしいなあ。こんなエロそうなパン焼いた記憶ねえぞ。こんなの売ってたら、女子高生に一気に引かれて店がつぶれちまう。

 店主がふと下の棚を見ると、そこにも同じようなエロいパンがあった。

 いやがらせの、イタズラかよ。ちっ、誰の仕業だ。こんちくしょうめ。

 全部で二つ。なるほど計算は合う。おっぱいは二つだから。店主はブツブツ言いながら、それをゴミ箱に放り込んだ。

 

 マリンは湯船につかって、放心していた。そっと胸を見る。やっぱりない。彼女の頭は混乱する。

 相談してみようか。彼女は想像してみた。

 「あのね、あのね、そのね」

 「何よ、マリン。何が言いたいの?」

 「えへっ、あのさあ、おっぱいがさあ、なくなっちゃったり、なんかしてえ? 経験ある?」

 「道で落としたんじゃね? 小さいから、ウキっ♡」

 

 確かに! 彼女は閃いた。

 ある筈のモノがないのは、落としたと考えるのが常識だよ、目からウロコー♡

 

 おっぱいを道に落とすことが、いかに非常識であるかを彼女は見落としていた。

 

 パン屋の息子、タカシ、高校一年生、マリンの同級生だ。おやつは売れ残りのパンと決まっている。今日も今日とて、袋に入った売れ残りのパンを頬張った。口を動かしながら、ふとゴミ箱をみる。なんだかエロそうなものが彼の目に飛び込んだ。しばらく、ぼんやりと眺めていた彼は、いった。

 「くくく、エロおやじ、遊んでやんの、バカだねー」

 親をバカにしながらもエロいパンをふたつ拾い上げ彼は部屋への階段を上った。


 タカシ君、君も立派にエロい!


(その2へ続く)

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