第8話 リップガール(復刻版+改稿) その2・完結
正門の守衛を務める刑務官が、警戒心をあらわにチ○コ星人を眺めている。無理もない、なにせ顔が、チ○コなのだから。
落ち着かない様子で、刑務官は門の前を行ったり来たりしていた。
フェラーリ・ラフェラーリの運転席のウインドウが開いていく。しなやかで美しい腕が伸び、手のひらでイイね♡ を作った。どうやら女のようだ。
それを見ていたチ○コ星人は、照れ笑いを浮かべ(想像である)小走りで車に近寄っていった。
と、イイね♡ の手のひらは、待て! のポーズに変わった。チ○コ星人は、表情をこわばらせ(しつこいようだが、想像だ)立ち止まった。
運転席のドアが開き、太ももが露わになった生足が、赤いハイヒールをはいて道路に出てきた。やはり、女だ。派手な真紅のワンピースが、そよ風に揺られる。
均整のとれた肢体、優雅な腰つき、引き締まったウエスト、控えめだが清楚な胸元、そして、なまめかしい真っ赤な唇、そ、そ? うん? 大きめのストローハットから、美しい長い黒髪を風になびかせている。パーツ、パーツは申し分のない、完璧で素敵なレディーだ。
だが、だが、縮尺がおかしい、バランスが変だ。というか、首から上が、超巨大な真っ赤な唇しかない。目も、鼻も、耳もない。
そう! 彼女こそは知る人ぞ知る、しゃぶりついたら離さない、リップガール、伝説の魔女だ。
彼女はその巨大な唇を動かした。
「手紙は読んだの?」
「もちろんだよ。この日を夢見て、君に会う事だけを考えて、やっと、たどり着いたんだ。君に会いたかった」
「だったら、なぜ隠すの?」
「すまない、ごらんの通りだ」
チ○コ星人は自嘲気味に笑った。・・・ようだ。
「モザイクの入った、あなたなんて、あなたじゃない! もっと素直な、あなたを見せてよ!」
「そうだよね、仮釈放の条件とはいえ、モザイクをかけた僕は卑怯者だった。何のための仮釈放だよ! 君に会うためじゃないか! 本末転倒だ。君に軽蔑されてまでモザイクをかけるなんて、意味ないじゃないか!」
そう叫んだチンコ星人は、モザイクをかなぐり捨てた。あっと驚く、巨大な男根がそびえ立つ。
正門にいた刑務官はひっくり返った。這うようにして警備室にたどり着いた彼は、電話を取り上げ大きな身振りで叫んでいる。
「素敵、ありのままの、あなたが好き♡」
リップガールは、一歩近づく。
「爽快だ! かすみが晴れたように」
確かにそうだろうが、この絵柄は相当きつい。夢でも、まず出てこないであろう光景だ。
「ねえ、キスして」
何いってんの! 意味分かってんの? 絵柄考えてる? 二人の距離は徐々に近づき、チ○コ星人はリップガールの肩に手をかけ、顔(?)を接近させていく。
あー、だめだ! 露出狂的変態趣味と思われたら心外だ、ここからは自主規制に入る。幕だ、幕! 照明を切れえ!
幕は下り、照明も消えた。ドタドタと、幕の後ろが騒がしい。
「なに、すんですかー!」
「やかまっしゃい! 公然わいせつの容疑で再逮捕や!」
「キスしただけ、ですだー! お許しをー!」
「お前らのキスは公序良俗が許さへんのや!」
「ひえー! 旦那あ! 見逃してくだせえー! どうか、おめこぼしをー!」
「なにい! おめこぼしい!? おめこ星☆? そんなエロい星、あるんか? それ、どこにあんねや? ロケットでいけるんか? 聞きたいことは山ほどあるで、拘置所に移送や! あっ、君はええよ。唇は対象外やから」
了
(帰ってきたリップガールへ、つづく)
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