第9話 みちづれ
【まえがき】
前作、第7話~第8話 リップガールは規定違反の疑いがあり、まさに本文に書いた通りに、主人公のチ○コ星人は逮捕され、○○○星への流刑が決定し、悲しい片道切符を手に旅立ちました。リップガールがフェラーリを改造して彼を追って行ったのは言うまでもありません。異世界(サイト)で二人が幸せに暮らせますように。
注)現在は、復刻しておりますので、あしからずご了承ください。
というわけで、今回は誠に申し訳ありませんが、お笑いを期待する人のご希望には添えません事、あらかじめご了承のほど、お願い申し上げます。たわいもない事は保証致します。
【本文】
ケイは旅をしていた。女の一人旅は危ないものと決まっているが、本人はそう思っていない。
悪いことをする奴が悪いんだ、私は悪くない。自由に旅をするのは私の自由。
恐怖心がないこともなかったが、そう自分に言い聞かせていた。今までそれで大丈夫なのだから、この先も大丈夫、悪くないから守られると信じている。
確かに、彼女の暮らしていた場所では暗い夜道を一人で歩いていても、危険な目に会うことはなかった。
だが、それは彼女の信念がそうさせたのではなく、治安をよくするために先人たちが苦労して築きあげたシステムだという事を、ケイは認めようとしなかった。
ケイの目的はスターの塔に登る事だった。そこに登ることができれば、名声と富が手に入る。そう教わってきたからだ。
ケイが歩いていくと、前方に分かれ道がある。右か左か思案していると、物陰から男が現れた。
さすがに驚いた彼女は警戒した。
「お嬢さん、一人ですか?」
男は、ニヤつきながら近寄ってくる。どう見ても理性的な男には見えない。
「いえ、彼が後から来るわ。もうすぐ追いつくはずよ」
平静を装っていたが、声は少し上ずった。
「ほう、ここいらは物騒だからな、彼氏が来るまで一緒にいてやろうか?」
彼女は当初戸惑っていたが、何気ない会話から、思わず会話が弾んだ。そんなに悪い人でもなさそうだと思い始めた。打ち解けて話すうちに、彼氏が来るというのは男を警戒してついた嘘だと、彼女は笑いながらいった。
「なんだよ、ずいぶんだな。見てくれはよくないが悪人じゃないと思うよ?」
「えへへ、ごめんなさい。あたし、スターの塔に登りたくて旅してるの」
「ほー、夢は大きくでっかいねえ。スターの塔は誰でも登れるもんじゃないよ」
「知ってるの?」
「そりゃ知ってるさ。知ってるだけで見たことはないけどね」
ケイと男が談笑していると、後方から2人の女がやってきた。女たちは顔を見合わせ駆け寄ってくる。
「この人に何か、ご用ですか!」
銀髪でアニコスの女が男を睨み付けた。男はその女をじろじろ眺めて
「あれ、あんた。ちょっと前に話した事なかったっけ?」
「あんたなんか知らないわよ! あなた、大丈夫? 行きましょ!」
ケイは呆気にとられながらも、銀髪の女に腕を引かれ、左側の道を進んだ。寄り添うように、キャリアウーマン風の服を着たメガネ女子が続く。
男は、何か言おうとしたが、分かれ道の角に取り残された。
メガネ女子がケイに高圧的にいった。
「あいつの口車に乗ったらダメ。スターの塔に行くんでしょ?」
「え? どうしてそれを?」
銀髪の女が、ケイを抱き寄せささやいた。
「ここを通る人は大抵そうなんだから、分かるわ。私たちはどこにあるのか知ってるのよ。一緒に行きましょ」
「そーなんですか? よかった。あたし、知らなくて、ちょっと困ってました」
メガネ女子は、微笑んでうなずいた。
「私たちが一緒なら必ずいけるわ。だから、言う事聞いてくれる?」
「はい。心強い味方ができて、よかったあ!」
彼女たちは親しげに道を歩いて行った。
取り残された男は頭をかきながらボソリとつぶやいた。
「たしかあの女、親しげに話しかけてきて、だらだら自分の事言った後でプイっといなくなった女だよな。まっ、いいか」
男は右側の道を、鼻歌を歌いながら歩を進めた。
右か、左か、行ってみなけりゃ、わからない。
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