第6話 おっぱいの憂鬱 その5・完結
マリンは、とうとう一睡もできなかった。レースのカーテンからは朝日が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえる。
「はあー」
大きく息を吐いたマリンは横向きになって考えた。
こんな経験、あたしだけなのかな。みんなもそうなのかな。今日、学校でそっと聞いてみようかな。だけど、あたしだけだったら、いやだな。みんな、引くかな。SNSで拡散されるかな。
テレビ局から男のレポーターが来て、突撃取材されるかな。
「この不思議な現象に対してご感想は? 自覚症状はありましたか? 昨日、何を食べましたか? 因果関係はあると思いますか? 全国民に対して一言お願いします」
なに言ってんの? 知らねーし。って、シカトしたら
「お前、悪いと思ってねーのかあ! 責任とれ!」
って
横で女のレポーターが、うつむいて人をかき分ける、あたしを見ながら
「今、人目を避けるように、女は自宅に入りました。現場は騒然としています。以上、現場からでした」
なんて犯人扱いされるのかな。はあー最低。あたし、なんか悪い事したっけ? 普通にみんなと同じだと思うんだけどなあ。
「ふうー」
仰向けになった彼女は、そおっと、胸を確認した。と、あった!
ええ? マジマジ! あるじゃん、あるじゃん! え?え?
彼女は喜色満面、渦巻いていた
彼女は自分の胸を鷲づかみ
「ある時ー!」
と、笑った。
キッチンに姿を現したマリンは鼻歌交じりで、牛乳を飲もうと冷蔵庫を開けた。
しばらくして
「ぎゃあー!」
彼女は悲鳴を上げ、何物かを床におもいきり叩きつけた。ビッターン!
床に、極大のフランクフルトが転がっている。
「気持ち悪! 急にでかくなったし」
マリンはおぞましい物を見るような
「こいつめ! こいつめ! 参ったか、こいつめ!」
その頃、タカシはベッドから落ちて床を転げまわり、股間を押えて悶絶した。鼻に詰め込んだティッシュが痛々しい。
マリンはスリッパで現物をサッシ戸まで追いやり、戸を勢いよく開けた。フランクフルトはピクピクと
「いやあああー! キモーい!」
彼女は、それをおもいっきり蹴りだした。弾丸シュートのように蹴りだされたそれは、空高く消えた。
それと同時に、タカシは股間を押さえて、白目をむいて、落ちた。
朝、色々あったマリンは遅刻気味に校門を走り抜ける。と、悲鳴を上げて女子生徒が逆走してきた。
「きゃー! きゃー!」
悲鳴のする方に目を向けた彼女は
「ぎゃあー!」
と叫んで、みなと同じ方向へ逃げた。クモの子を散らすように逃げた女子生徒の後方に到底信じがたいものが現れる。それは男子学生の制服を着て、叫んだ。
「俺は、チ○コ星人だあ!」
その時、警官隊が突入し、怪物は瞬く間に取り押さえられた。
警官の一人が叫ぶ。
「わいせつ物ちん列罪で現行犯逮捕する!」
タカシが学校を欠席していたのは、言うまでもない。
了
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