第5話 おっぱいの憂鬱、その4

 金に目が眩んだとはよく言うが、タカシは生おっぱいに目が眩んだ。

 おっぱいは、居丈高にいった。

 「あたしはねえ、全校女子生徒の、おっぱい代表なんだ!」

 「おっぱい代表?」

 そんな代表があるのか。彼は感心する。そして今度は気合を入れて目力全開、おっぱいをガン見した。

 「それ! それ!」

 おっぱい代表は憤然として、タカシを指差した。

 「お前のその刺すようなエロい視線によって、全校女子生徒に被害が及んだ事が、残された一名に視線が注がれた事で、本日確定した。だから私たちは立ち上がった! これ以上お前のエロMAXには、おっぱい一同、耐えられないのだ!」

 タカシは相当なエロと認定されているらしい。エロMAX、まるで変態ヒーローだ。おっぱい代表の非難にひるむことなく、ガン見を貫く彼はいった。

 「えー、おっぱい代表さんに質問です。あなたは誰のおっぱいなのですか?♡」

 ひよこは初めて見た生き物を、親だと思う。タカシは初めて見る生おっぱいが、好きになったようだ。

 「言えるか! どうせ持ち主の女子生徒を、さらに研ぎ澄まされたエロい目で見るに決まっている!」

 図星だ。いや、それ以上に、タカシはおっぱいの持ち主に告ろうと考えていた。

 なんと、すえ恐ろしい男だろう。この凄まじいエネルギーと急成長には目を見張るものがある。

 「ふっ」

 タカシの奥の手が出た。

 ニヒルな刑事役に復帰した彼は、笑みを浮かべて立ち上がり、人差し指を立てて横に振る。目つきは鋭いが、鼻に詰めたティッシュが、おマヌケだ。

 「論点を整理しようか」

 タカシは腕を後ろに組んで上を見上げた。鼻に詰めたティッシュが揺れる。

 「君たちは、胸を見られた。それは服の上からという事でいいね? 生おっぱいは見ていない、それが犯罪だとでも?」

 鼻で揺れるティッシュが緊張感をそぐ。

 「開き直るつもり?」

 おっぱい代表は、彼に犯罪者のレッテルを張った。

 「うむ、分かった。嫌悪感を抱いた。それは真実かもしれないな。ふー、教えてくれないかな、その男は」

 彼はおっぱい代表を、やさしく包み込むようにしていった。

 「誰だ?」

 「おめえだよ!」

 

 彼らの押し問答は、その後も続けられるわけだが、おそらく太古の昔から続く議論、平行線をたどるのは明白であった。

 人類に大脳新皮質が与えられた時から、この反目はんもくは人の宿命なのだろう。

 それにしても、あったら怖いが、お目にかかりたい、おっぱい代表である。


(その5に続く、次話完結)

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