第33話 メロメロドラマ 「よろめき」

 ええ、そうよ。あたしは、そんな女じゃない


 カレンは拒絶しながらも、ヒロシの接吻を受け入れていた。

 眉間にしわを寄せ、立てた爪はヒロシの髪を鷲づかみにしている。


 ちょっとルックスがいいからって、ちょっとやさしいからって、ちょっとお金持ちだからって、あたしはそう簡単には落ちないんだから、絶対


 精神はかたくなに拒みながら、この後ヒロシに蹂躙されていく自分の姿を、どこか俯瞰的に思い浮かべるカレンであった。


 ひっぱたいてやるんだから! ひっかいてやるわ! 暴力には屈しない!


 声にならないカレンの抵抗の証、それは妙に悩ましいうめき声にヒロシには聞こえたようだ。普段、理知的な振る舞いをするヒロシのリミッターが外れた。

 荒々しくカレンをうつぶせにして、ヒロシは彼女の下半身の下着を手際よくはぎ取る。


 「いや!」


 「なにが?」


 ソファに腰かけたヒロシは不思議そうにカレンを見つめた。

 少しアルコールが過ぎたようだ。目が覚めたカレンは顔を赤らめ、ツンとした表情で言った。


 「ふん! バカ……最後まで責任持ちなさいよ!」

 「???」


 二人には何の罪もない。


                了

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たわいもない世界 宇近太助 @skipkenji

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