第3話 おっぱいの憂鬱、その2

 タカシは清涼飲料水をガブリと飲み、パンをほおばった。ベッドでスマホのアプリを見ながら、親指で文字を打つ。

 と、ちらっと視線を投げた。机の上のエロい代物が二つ目に入る。

 「ふっ」

 十六歳とは思えないニヒルな笑みを浮かべた彼は、目をスマホに落とし再び文字を打つ。

 「ふうー、まっ、いいだろう」

 何がいいのか分からない。が、文字を打ち終えた彼は、大きく背伸びをして、机の前の椅子に腰かける。

 そして不自然にエロい物に背を向け、独り言をいった。

 「確かに、そうだとしてもだ」

 なにが、そうだというのか、よく分からない。

 と、彼は回転椅子を回し始める。くるくると回って、エロい物の前で椅子を止め、それを凝視していった。

 「お前も、そうなることを望んでいたはずだ」

 どうなること? 

 タカシはエロい物に鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。

 「ん? パンのはずだが」

 彼は鼻を近づけてクンクンと匂った。

 「妙だな、悪いが調べさせてもらう」

 なるほど、タカシは刑事役になりきっているようだ。後ろめたいことがある時に使う、彼の奥の手である。

 彼のたくらみは、ニヒルな笑みを浮かべた時からというわけか。

 タカシはエロいものに顔を近づけた。

 くん、くん、んーん? くん、くくくくくくん、くくくくくくん、くんくくくくくくくくんくん。

 お前は犬かというほど匂いを嗅ぐタカシ。


 入浴中のマリンは、胸に違和感を覚えた。

 「なに?」

 手で胸を触るが、おっぱいはない。だが、いやな感触は伝わってきた。

 「やだ、気持ち悪い」

 彼女は、ない胸を手のひらでおおった。


 「何だ? 嗅いだことがあるような、ないような、この怪しい匂いは。疑惑は、ますます深まった! 逮捕する!」

 タカシは大口を開けてかじろうとしてやめ、真ん中の赤い粒にキスをした。


 「きゃあ!」

 マリンは湯船で、七転八倒、お湯は波打ち、あふれかえった。

 胸を手で押えたまま立ち上がった彼女は、顔を真っ赤にして肩で息をする。

 彼女は、直感で理解した。

 「落としたあたしの胸で、誰かがイタズラしている」

 彼女は叫んだ。

 「やめて! これ以上やったら、警察呼ぶからね!」

 と、いった後、あわてて後ろを向いてザブンと湯船につかった。


(その3に続く)

 

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