第13話
「先輩!! ここに行きましょう!!」
「え? お化け屋敷?」
愛実ちゃんが指さしたのは、お化け屋敷のある場所だった。
なんでも夏期限定の特別オープンらしく、かなり大々的に宣伝をしているようだ。
しかし、ここに行くには問題がある。
それは、俺がお化けやホラーの類が苦手だと言うことだ。
しかし、その事を愛実ちゃんに知られるのも、なんか格好悪い。
なのでここは、俺が行きたくないのを悟られないようにしなければならない。
「あぁ……良いけど、多分結構並ぶんじゃ……」
「休日だし、そこまで並んで無いんじゃないですか?」
「いや……愛実ちゃん、怖くないの?」
「ホラーは大好きです!」
「そ、そうなんだ……」
ダメだ、どうやって断ったら良いか分からない……。
ここは腹をくくって行くしか無いのか。
てか、なんでお化け屋敷なんだよ……隣の『メルヘンワールド(爆)』の方が楽しそうじゃん。
てか、『(爆)』って何?
「そ、それよりもこのメルヘンワールドの方が良くない?」
「えぇー、絶対にこっちの方がいいですよぉ〜。それとも怖いんですか?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
「本当ですかぁ〜?」
「ほ、本当だよ! し、仕方がないなぁ〜、ほら行くよ!」
「は〜い」
しまった、話しの流れでお化け屋敷に行くことに!!
やばい! このままでは、俺がお化け嫌いのヘタレだと言うことがバレてしまう!!
俺は背中に冷や汗を掻きながら、お化け屋敷のエリアに向かった。
「……来てしまった」
「何か言いました?」
「いや、気のせいだよ」
俺はお化け屋敷の前でため息混じりに呟いた。
正直、もう帰りたい。
中になんか入りたくない。
だが、そんな事を言えるはずも無く……。
「やっぱりそんなに並んでませんね。ほら、行きましょう!」
「あ、あぁ……そうだね」
列に並び、俺の心拍数は更に上がった気がした。
隣の愛実ちゃんは、わくわくしながらパンフレットを見ており、俺の様子の変化には気がついていない。
なんで、こんなに楽しそうなんだ……俺には理解出来ない……。
「先輩! ここすごいですよ! 出てくるまで約三十分も掛かるそうですよ! 世界最大級の大きさですって!」
いらない情報をどうもありがとう。
それを聞いた俺は、更に中に入るのが嫌になってきた。
てか、なんだ三十分も掛かるお化け屋敷って!!
そんなの罰ゲームだろ!
「いやぁぁぁぁ!!」
「な、なんだ!?」
「あぁ、先に中に入ってる人の悲鳴ですね。楽しみですよね! こんな悲鳴聞いちゃうと!」
俺は恐怖が倍増したよ!
なんで悲鳴を聞いて楽しみになるんだよ!
そんな事を考えながら列に並んでいると、列はあっという間に進み、次が俺と愛実ちゃんの番になってしまう。
「先輩! いよいよですね!?」
「あ、あぁ……た、楽しみだなぁ〜」
「先輩、なんか顔青くないですか?」
「き、気のせいだよ……ほ、ほら、俺たちの番だ」
俺と愛実ちゃんの番になり、俺たちは係員の指示に従って中に入って行く
中は薄暗く、スタート地点は狭い。
最初に目の前の液晶に、このお化け屋敷のストーリー設定が流れてくる。
『ここは、閉鎖された廃病院……。この病院の医院長は裏で密かに臓器売買に手を出しており、閉鎖された今でも、医院長に殺された患者達の霊が今も自分の無くなった臓器の代わりを捜して、さまよっているそうな……』
「ありがちだけど、面白いですね!!」
「そ、そうだな……」
こういうありがちなのが一番怖いんだよ……。
俺はそんな事を思いながら、指示通りにコースを歩いて行く。
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