第8話


 プールに行く日の当日。

 俺は駅前で愛実ちゃんを待っていた。


「暑いなぁ……」


 日差しが強く、気温も高い夏の昼。

 なんで俺は女子高生とプールに行こうとしているのだろう?

 そんな事を考えながら、愛実ちゃんを待っていると突然後ろから誰かに両目を塞がれてしまった。


「だ〜れだ?」


「……何してるの? 愛実ちゃん」


 俺がそう言うと、視界が明るくなり、目の前に愛実ちゃんが現れた。


「せいか〜い! 正解のご褒美に腕を組んであげてもいいですよ」


「いや、そう言うの良いから」


「え、何でですか? 現役女子高生と腕組めるんですよ? 馬鹿ですか? それともアホですか?」


「どっちでもないけど、遠慮しとく」


 愛実ちゃんはショートパンツに、カットソーTシャツと涼しげな格好をしていた。

 背中にはリュックを背負っており、満面の笑みで俺を見ていた。


「もったいないですねぇ〜、じゃあ可愛そうなので手を握ってあげます」


「いや、だからいいって。早く行こうよ」


「もぉ〜そんなに私の水着が見たいんですかぁ〜? 先輩のエッチ!」


「……早速帰りたくなってきた」


「そんな照れなくても良いのにぃ〜」


「……面倒くせぇ……」


「何か言いました?」


「なんでも無いよ……早く行こう」


「あぁ! はぐらかした!」


 俺と愛実ちゃんは、電車に乗ってプールに向かう。


「先輩、私とデート出来て嬉しいですよね?」


「え? これってデートなの?」


「年頃の男女が二人で出かけるって行ったら、それはデートですよ」


「いや、愛実ちゃんと俺だと、どっちかって言うと兄弟なんじゃ……って、イテテ! な、何するの!?」


 俺はなぜか愛実ちゃんから、電車の中でおもいっきり足を踏まれた。

 愛実ちゃんは頬を膨らませて、そっぽを向いていた。


「自分の胸に聞いたらどうですか?」


「は、はぁ?」


「フン!」


 機嫌が良かったり、悪かったり、本当に女子高生は良く分からない。

 

「まぁでも、愛実ちゃんは可愛いから、並んで歩けるのは嬉しいかな?」


「え? な、なんですか急にぃ〜。きゅ、急に褒めても何も出ませんよぉ〜」


「……黙ってればな」


「なんか言いましたぁ〜?」


「イデデデ!! い、言ってない! 言ってないから!!」


 今度は手の平をつねられてしまった。

 折角褒めてあげたのに……。


「もぉ〜、先輩は私に対して冷たいですね!」


「別にそんなつもりはないんだけどな……」


「冷たいです! もっと優しくしてくださいよ!!」


「優しいだろ? こうやってプールに付き合ってるわけだし」


「それは先輩が私の水着姿を写真に納めて、夜の自家発電に……」


「そんな事に使うかっ!! それと、女子高生がそう言うことを言わないの!!」


「ふぅ〜ん、私の今日の水着……すっごいのにぃ〜」


「ソウナンダー、キタイシテルヨー」


「感情が無いんですけど!」


 そんなどうでも良い話しをしているうちに、プールに到着した。

 流石は大型のアミューズメントパーク、敷地も広い上に人も多い。

 夏休みと言うこともあってか、学生らしき客が多く、知り合うとあってしまいそうで、なんだか怖かった。


「すごいですねぇ〜、流石は夏休み、人が多い」


「そうだね、でも休日じゃない分、まだ人は少ないみたいだけど」


「じゃあ、早速行きますか!」


「はいはい」


 俺は愛実ちゃんに手を引かれ、中に入っていく。






 更衣室で分かれた愛実ちゃんと分かれた俺は、海パンに着替えていた。

 

「財布と……あとスマホか、よし」


 俺は持ち物を確認し、パーカーを羽織ってプールサイドに向かう。

 プールサイドを見ると、明らかにカップルが多かった。

 

「はぁ……良いよなぁ……」


 俺は愛実ちゃんを待ちながら、ため息をついてプールサイドのカップル達を眺めていた。

 

「俺にも彼女が居ればなぁ……」


「どこ見てるんですか?」


「え? あぁ、来たんだ」


 後ろから声を掛けられ、俺は後ろを振り向く。

 

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