第4話


 合コン当日、俺は小山君に選んで貰った服でカラオケに向かっていた。


「緊張するな……」


 知らない女の子と話すとなると、なんだか今から緊張してくる。

 俺は電車に乗り、駅前のカラオケ店に急ぐ。


「よっ! 次郎」


「おう、またせたな」


 カラオケ店の前には、既に友人達が集まっていた。

 今日の合コンは4対4と結構な大人数で行われる。

 みんな気合いの入った服装で、なんだかいつもと雰囲気まで違って見える。


「おまえら、かなり気合い入ってるのな」


「その言葉、お前にそのまま返すよ」


「それよりも今日はすげーよな! なんたって現役のJKだぜ!」


「は? JK?」


「あれ? 次郎聞いてないのか? 今日の合コンは女子高生が二人参加してんだよ」


「はぁ!? 俺、そんな話し聞いてねーぞ!」


「別に良いだろ? 高三だし、そんな年も変わんねーって」


「いや、女子高生って……大丈夫なのか?」


「まぁ、酒は無しって先に言ってあるし、大丈夫じゃね?」


 まさかの真実に俺は驚愕した。

 てっきり、どこぞの女子大生とかが相手だと思っていたのだが、まさか相手の人数の半分が女子高生なんて……。

 そんなことを考えながら、俺はふと愛実ちゃんの顔をを思い浮かべてしまう。

 いや、まさかな……。

 そんな事を思いながら、俺達は来店し部屋に向かう。

 もちろん相手はまだ来ていない。

 

「よし! 作戦会議といこうぜ!」


「は? 作戦会議?」


「あぁ、狙ってる子が被ったら大変だろ? だから、互いに女の子を奪い合わないように打ち合わせるんだよ」


「なるほどな」


「そこで俺は考えた! 自分の席の前に来た女の子を狙うってことでどうだ?」


 カラオケの部屋の中は、対面で座れるようになっており、最初は男性と女性で分かれようという話しになっていた。


「なるほどな、確かにそれなら恨みっこ無しだな!」


「それでいこう!」


「まぁ、俺も別に良いけど……」


 女子高生が目の前に来たらどうしようと考えながら、俺は席に座る。

 ドキドキしながら、女の子が来るのを待っていると、ゆっくりと部屋の扉が開いた。


「すいません、お待たせしました〜」


「今日はよろしくお願いしま〜す」


 そう言って入ってきたのは、同じ年位の女の子が二人。

 俺の友人達は思いっきり鼻の下を伸ばしながら、女の子に向かいの席に座るようにうながす。

 そして、合コンに参加するメンバーが揃い、ついに合コンが始まった。

 俺の目の前に居る女の子は……。


「………」


「………」


「……せんぱ……」


「人違いです……」


 なんと言うことであろう、俺の席の前には、あろう事か私服姿の愛実ちゃんが座っていた。

 いや、いや!

 なんで愛実ちゃんが居るんだよ!

 偶然にしても出来すぎてるだろ!!

 俺はそんな事を思いながら、顔を反らす。


「いや、絶対に先輩ですよね?」


「な、何を言ってるのか……ぼ、僕は君の事なんてし、知らないよ……」


 バレたら絶対にからかわれる!

 俺はそう思って、必死にごまかそうとする。

 しかし、彼女からは既にバレていた様子で、ニヤニヤしながらこちらをみていた。

 あぁ、俺の始めての合コンは終わったんだと、俺はこの時察した。





 私は、目の前に座っている人の顔を見て驚いた。

 なんと、合コンの相手がまさか先輩だなんて思いもしなかったからだ。

 どうせ、合コンなんて面白くないだろうと思い、いやいやついて来た私とって、この偶然はすごく嬉しかった。

 私は、必死に顔を隠す先輩を見て、ついついからかいたくなってしまった。


「うふふ……お名前はなんて言うんですか〜?」


「えっと……た、太郎です」


「いや、お前は次郎だろ」


 そうツッコんでいたのは、先輩の隣の男の人だった。

 どうやら先輩のお友達のようで、先輩の肩を抱いて、ニヤニヤしながら私に話しを掛けてくる。


「ごめんねぇ〜、こいつ合コンなんて始めてだから、緊張してるみたいでさぁ〜」


「大丈夫ですよ〜、全然気にしませんし〜」


 先輩は気まずそうな顔で、私をちらちら見ていた。

 可愛い。

 私は思わずそう思ってしまった。

 きっと私にからかわれるのが嫌だったのだろう、だからあんな嘘をついたのだ。

 周りも盛り上がってきており、男性と女性二人ずつで話しが弾み始めていた。

 しかし、先輩だけは借りてきた猫のように大人しかった。


「次郎さんわぁ〜何かバイトとかしてるんですかぁ〜?」


 私はわざとらしく先輩に尋ねる。

 先輩はため息を吐いたあと、視線を反らしながら私に向かって答える。


「え、えっと……ふぁ、ファーストフード店で……」


「へぇ〜! 偶然ですね! 私もなんですよぉ〜」


 そんな事は知っていると言いたげな様子で、先輩は私の事を睨んでくる。

 そんな顔をするなら、私にだって考えがある。


「隣に座っても良いですかぁ?」


「だめです」


 即答かよ……。

 そんな事を私が思っていると、先輩の友達が席を譲ってくれた。


「こいつ恥ずかしがり屋だからさぁ〜、俺の席に座れば良いよ!」


「良いんですか? ありがとうございます!」


 私が笑顔でそういうと、先輩の友達は先輩に親指を立ててどや顔をしていた。

 しかし、先輩はすごく嫌そうな顔をしていた。

 私はそんな先輩の隣に座り、小声で先輩に言う。


「何やってるんですか先輩? 彼女が欲しいんですか?」


「うるせぇ! なんで愛実ちゃんが居るんだよ!」


「私は友達に頼まれたんですぅー。で、先輩はそんなに女の子に飢えてるんですかぁ〜? 今度からスケベ先輩って呼びますね」


「楽しそうだな君は……」


 先輩はため息を吐きながら、私にそんな事を言ってくる。

 これはチャンスだと私は思った。

 バイト以外で先輩と会える数少ないチャンス、これを生かさない手は無い。

 私は更に先輩に近づき、先輩にもたれ掛かる。


「せんぱ〜い、まさか女子高生にまで手を出しちゃうんですかぁ〜?」


「は、離れてくれない? あ、暑いから……」


「あっれぇ〜? もしかして緊張してますぅ〜?」


「す、するわけ無いだろ!」


 これが嘘だと私はすぐ分かった。

 だって、先輩の顔が真っ赤何だもん。

 私はそんな先輩を見て改めて気がつく、私が先輩を好きなんだという事に……

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