第11話



 私は先輩とプールに来ました。

 先輩の水着とか、先輩と二人きりとか、先輩と一日一緒とか、かなり嬉しい。

 

「ま、愛実ちゃん?」


 しかも二人でスライダーを滑る事も出来、もう私は満足していたのだが、先輩は先ほどのスライダーで、私の胸を鷲掴みにした事を気にしているらしい。

 

「あ、あの……あ、謝るからさ……機嫌直して」


 別に少し恥ずかしかっただけで、私は別に気にしていない。

 まぁ、相手が先輩だからと言うのもあるけど。

 先輩は私が怒っているのだと勘違いをし、さっきからずっと謝って来ている。

 そんな困った先輩を見て、可愛いなんて思っている私は少しSなのだろうか?

 私はそんな事を考えながら、先輩をからかってやろうと、小さな声で先輩に言う。


「私……誰にも揉まれた事……無いのに……」


「うっ……ご、ごめん! 本当にごめん!」


「初めてだったのに……」


「ほ、本当にごめん! えっと……何か俺に出来る事ならお詫びするから!」


 お詫び?

 思いがけない先輩の提案に、私は思わず黙って考える。

 え、じゃあまたデートの約束とか取り付けてもオッケーって事?

 いや、ここはがめつく、思い切って告白!?

 あぁ、でもそれだと先輩を脅すみたいで、なんか違うし……。


「ま、愛実ちゃん?」


 あー! もう! 何をお願いしたら良いか迷っちゃう!!

 あれやこれやと考える私だが、なかなかまとまらない。

 せめて、夏休みにもっと先輩と会えるようなお願いが良い!!


「じゃあ……」


「う、うん……」


「今度、先輩と温泉に行きたいです」


「え?」


「もちろん、旅費は先輩持ちで」


「いやいや、それはあの……プールに行くよりも……その色々とまずい気が……」


「一泊二日で我慢します」



「まって! 宿泊はダメ! 絶対だめ! 大体愛実ちゃんの両親だって男と旅行なんて心配……」


「鷲掴み……」


「予定を組ませていただきます!」


 よし! これで先輩と二人で旅行に行ける!!

 しかも今度は温泉だし、先輩のバイト代じゃあ、二部屋なんて取れないから、絶対に同室!

 そこで先輩と……ウフフフ……。


「ま、愛実ちゃん?」


「さぁ先輩! 次行きますよ!」


「機嫌直るの早っ!!」


 私は先輩の手を引いて、流れるプールの方に向かっていく。

 





「はぁ……なんか腹減ったな……」


「もうお昼ですしね」


 一通り遊んだところで、俺は少し疲れてきていた。

 お腹も減ってきたので、俺は愛実ちゃんと外に出て食事をする事を提案する。


「十分泳いだし、プールの外に何か食べに行く?」


「はい、じゃあ着替えてプールの入り口に集合ってことで」


「わかった、じゃあまた後で」


 俺と愛実ちゃんは更衣室前で分かれた。

 しかし、愛実ちゃんの機嫌も直って良かった。

 代償は大きかったが……。


「二人で温泉なんてまずいよなぁ……」


 俺は思わず了承してしまった、温泉旅行の件を考えながら、水着を脱いで着替えをしていた。

 未成年の女子高生と二人で旅行なんて、バイト先で噂になったら大変だ。


「あ、そうか! 誰も二人とは行ってないわけだし、折角だしバイト先のみんなで……」


 そうだ、それが良い。

 確か、いつだかに店の店内清掃と空調設備の点検で休業になる日があったはずだ、その日ならみんなを誘えるだろう。


「そうしよう! その方が愛実ちゃんも楽しいしな!」


 我ながら良い考えだと思った。

 問題も解決し、俺は着替えを済ませて更衣室を出る。

 愛実ちゃんはまだ来ていなかった。

 まぁ、男よりも女の子の方が時間が掛かるのは仕方ないだろう。

 スマホを弄りながら愛実ちゃんを待っていると、突然肩を叩かれた。

 俺は愛実ちゃんが来たのかと思って振り向き、そこにいた人物を見てフリーズした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る