よく焼いてから食べましょう
★地域鑑定結果
シュターゼン国領地【幻想の森】
という場所らしい。
鬱蒼と生い茂る木々は小さなトカゲ、もといサラマンダ―になってしまった俺には無茶苦茶大きく感じられた。
夜なので更に不気味で、まるで大きなモンスターのようにも見える。
(まぁ、良いか。俺には最強の”ファイヤーブレス”があるし)
爬虫類の天敵であろうトカゲクイムシを一瞬で滅却したこの技さえあれば百人力。
という訳で俺は、何故か持っている”鑑定能力”を無駄に乱発して、周囲を調べながらペタペタと歩き続ける。
「ウオォォ~ッ!」
すると目の前に、幽霊みたいな声を上げる真っ白なモヤモヤが複数現れた。
(なんか顏みたいなの浮かんでてキモイ……)
★鑑定結果
【名称】:スピリット
【種族】:幽霊
【属性】:闇
【特徴】:死した無念の魂がモンスター化した存在。知能は引くい。
(そのまんまじゃん!)
と、突っ込む俺へスピリットはぶわぁっと、白い炎を吐きだした。
炎は一瞬で俺を包みこんだが、
(あったかい。ホッカイロ、くらいな? 気持ち良いなぁ)
しかし当のスピリットは煙の顔をちょっと歪めて、真面目に必死に炎を吐き続けている。
(喰らえ、ファイヤーブレス!)
「ウオオオォォォ~ッ!」
蠢く真っ赤な炎がスピリットを飲みこみ、燃やし尽くす。
白い煙な奴は炎を上げながら、ぽとりと地面へ落ちる。
甘くて、香ばしい香りが鼻を掠めた。
(旨そう!)
パク、ホフホフ、ムグムグ
口に放り込んだ瞬間じゅわっと口の中で溶け、ふわっと甘く香ばしい香りが口の中に広がった。じんわり広がるとろけるような甘さ。これは……
(綿菓子だ! 懐かしい!)
小さい頃のお祭りの思い出に浸りながらパクパクもぐもぐ。
大きなスピリットはあっというまに俺の胃袋に収まって、FP1に変換される。
もっと食べたい!
そう思った俺は隣で炎が鎮火して、プスプス煙を上げているスピリットへ噛り付く。
パク、ホフ……シャアァァァ―!
(なんだこれ!? ちょ、ちょーまずい!)
えぐくて、渋くて、硬くて甘さなんて微塵もなかった。
まるで”焦げ”を食べてるみたいで、すぐさま吐き出す。
(FPも増えて無い……なんだろ、これ?)
「ギャオ!」
気づくと新たな獲物の集団が現れていた。
★鑑定結果
【名称】:ゴブリン
【種族】:妖精
【属性】:木
【特徴】:最弱のモンスターの一角。しかし集団になると危険。
(出たな、定番最弱モンスターめ!)
丁度良さそう獲物と思った俺は、早速ファイヤーブレスを吐きだす。
「ギュオォォォ――ッ……!」
ボロボロな剣を掲げた姿勢でゴブリンは炎に飲まれて倒れた。
さすが最弱、あっけない。
俺は炎を上げているゴブリンの死骸へ恐る恐るかぶりつく。
パク、モグ、モグ、モグ……
(うん、悪くない。ちょっとぱさぱさしてるけど。鶏のささみ的な淡白な味わい?)
と、次は検証の最終段階。
更に慎重に炎が消えたゴブリンの死骸へ近づき、あんぐり口を開ける。
パ、パク、モグ、モ……
(だぁー! 史上最強に、ま・ず・いぃーッ!)
焦げた匂いに加えて、これは……真夏のごみ置き場の匂い、食感もどろどろしていて最悪! お腹を壊しそう!
ペペと吐きだし、唾液を口の中でぐるりと回して、残った匂いとカスを吐きだした。
(やっぱ予想通り”炎”を上げている時以外食べられないのか)
現に炎を上げていたゴブリンと、そうでないゴブリン両方を食べてみたが、獲得できたFPは1だけだった。
炎はあっという間に消えてしまうため、全部を食べられない。
(今度からは炎を上げてるやつだけ食べよう。てか、2体倒して片方しか食べられないってなんて糞仕様。ゲームだったら改善要求してやるのに……)
そうは思えど生憎、どこへお問い合わせしたらいいか分からないので、とりあえずこの仕様に納得せざるを得ない。
(まぁ、良いや。先に進もうっと)
FPが規定値まで溜まりました。
”ファイヤーボール/ファイヤーボルトを使用可能にしますか?
そんなメッセージめいた文字が視野に写っていた。
とりあえずYESを選択。
<あなたの情報>
【名称】:サマランダー
【種族】:精霊
【属性】:火
●属性スキル:ファイヤーブレス、ファイヤーボール、ファイヤーボルト、熱耐性
●物理スキル:ひっかく
●特殊スキル:魂の捕食
●エクストラスキル:???(*未開放)
FP:0
溜まったFPは無くなっていた。
(これって初期装備が整った的な、感じ?)
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