転生したのはトカゲ? イモリ? いえ、炎の精霊サラマンダー!――体長30センチほどですが、無双の活躍しちゃいます!――
転生したのはトカゲ? イモリ? いえ、炎の精霊サラマンダー!――体長30センチほどですが、無双の活躍しちゃいます!――
転生したのはトカゲ? イモリ? いえ、炎の精霊サラマンダー!――体長30センチほどですが、無双の活躍しちゃいます!――
シトラス=ライス
転生したのはトカゲ? イモリ? いえ、炎の精霊サラマンダー!――体長30センチほどですが、無双の活躍しちゃいます!――
(うわっ! あっつぅいぃっ――!!)
真っ赤な炎が見えて俺は思わずは飛び出す。
(あれ? 熱くない……?)
炎から飛び出した俺は何故か四つんばいで這いつくばっていた。
ぬらぬらしている丸みを帯びた赤ちゃんの手のようなものが見えた。
うしろではぱちぱち音をたてながら、分厚い本のようなものが、真っ赤な炎の中で燃えている。
(なんかおかしいぞ、これ!?)
そう思った俺は脇に見えた泉へ向かって、草をかき分けながら四つん這いで這ってゆく。
泉を覗き込んだもの、それは――体中に炎のようなまだら模様が浮かんだ”赤いトカゲ”だった。
(なんだこれ!? これが、俺!? 誰か教えて!)
もう訳がわからず、思わず心の中でそう叫ぶ。
すると突然視界にたくさんの文字が浮かび上がってきた。
★あなたの情報
【名称】:サラマンダー
【種族】:精霊
【属性】:火
●属性スキル:ファイヤーブレス、熱耐性
●物理スキル:ひっかく
●特殊スキル:魂の捕食
●エクストラスキル:???(*未開放)
FP:0
(なにこのゲームっぽいもの? しかもサラマンダ―って!?)
ますます混乱しただけだったが、まずは深呼吸で気持ちを落ち着ける。
とりあえず状況整理をしておこう。
(俺はたしか火事に巻き込まれたんだ)
たまたま寄った駅前のショッピングモールで火事に巻き込まれて、一生懸命逃げたけど逃げ場が無くなって。だけど炎が迫ってきて……で、気づいたらトカゲのようになっていた。
(さっぱりわからんねぇ……これ、もしかして転生ってやつ?)
そうかもしれない。あの炎だったし、生きているのが不思議な位だし。
(しかもサラマンダ―ってなんだよ。確かドラゴンの一つだっけ? でも俺の知っているサラマンダ―ってこんなトカゲじゃないよ! もっとおっきくて強い真っ赤なドラゴンだよ!)
しかし、このままこうしていても仕方がない。
火事に巻き込まれて、気づいたらトカゲになっていた。
でも生きていることは確か。
(俺の心情、それは……“迷っている間があったら、前に進め! 道はそこにある!”だ!)
だったらそれに従うまで。
諸所の疑問はとりあえず置いておいて、俺は現状確認に頭をシフトさせた。
(ふむふむ、今は夜で、森の中か。ちょっと湿っぽいのは近くに泉があるからからかな)
自分が飛び出したたき火から既に炎が消えている。
灰になった本と、明らかに人為的に組まれた木々の枝。
きっと誰かがここでたき火をしていたんだと判断する。
しかし既にたき火をていただろう人の気配はない。
(その人と会えればもうちょっと色々と分かるのになぁ……!!)
その時の俺の視界が木の幹に張り付いている何かを感知した。
★鑑定結果
【名称】:ファイヤサラマンダー
【種族】:爬虫類
【属性】:なし
【概要】:主に森林地帯に生息するトカゲ。危険を感じると毒液を放つ。
浮かび上がる文字列。
(これなに? もしかして鑑定ってやつ?)
YES、と何故か浮かび上がってくる。
(良くわかんないけど便利だから良いか)
目の前にいるのはたぶん爬虫類の同族。
自分がただのサラマンダ―で、あっちにファイヤが付いているか、きっと上位種かなんかなんだろう。
(挨拶ってできるのかなぁ? てか、格下っぽい俺を相手にしてくれるかなぁ? いや、同じ爬虫類だから分かってくれるはず!)
とりあえず失礼が無いよう身体をしゃんとさせて、ペタペタとファイヤサラマンダ―のところへ向かってゆく。
瞬間、サッと目の前を何かが過った。
ムシャムシャ、バリバリ……
(う、うわぁ~……)
鎧のような甲羅で覆われたムカデっぽい生き物がファイヤサラマンダ―を腹から食べていた。
★鑑定結果
【名称】:トカゲクイムシ
【種族】:昆虫
【属性】:木
【概要】:トカゲを主食とする森のハンター。囲まれれば人間でも危険。
むしゃむしゃとファイヤサラマンダを食べた続けるトカゲクイムシ。
ふと動きを止めて、真っ赤な複眼で俺を見る。
(これヤバいじゃん!)
「シャアー!」
トカゲクイムシは鋭い牙を開いて、うねうねと俺へ飛び掛かってくる。
(だ、黙ってやられるものか!)
俺は無我夢中で視界に浮かぶ自分の能力から”ファイヤーブレス”を選ぶ。
すると口が勝手に空気を吸い込み始めた。
吸い込んだ空気の分、口の中に真っ赤な炎が浮かんで、まわりを明るく照らし出す。
(喰らえ! ファイヤーブレス!)
口から炎が吐き出された。
炎は夜の森を昼間のように照らしだす。
少しぬかるんでいた地面はすぐに乾き、元気だった草は一瞬でしなびた。
そればかりは草が燃えはじめ、俺の周りはたった一撃のファイヤーブレスで紅蓮の炎に飲みこまれた。
「ジャアアアアァァァ!」
そしてトカゲクイムシは一瞬で、真っ赤な炎に飲みこまれて倒れたのだった。
(す、凄い威力……)
想像以上の威力に、正直俺はビビッていた。
すると視界の隅で【魂の捕食】という項目が明滅している。
何故か燃えている虫が美味しそうに見える。
(これってもしかして良くあるアレか!)
彼は遮二無二燃える虫へ飛びつき、パクリ。
香ばしい甲羅、ぷりぷりの食感に、僅かに甘みのある肉。
美味ッ!
まるで”エビの姿焼き”と思った俺は夢中になってトカゲクイムシを逆にくってやる。
パク、モグモグ、バリバリ、
FP:1 獲得しました。
(食べるとファイヤポイントってのが獲得できるんだ。益々ゲームっぽいなぁ……まぁ、良いけど)
どうやら捕食することでポイントが溜められるらしい。
わけは分からないがとりあえず前に進もう。
自分には強力な”ファイヤーブレス”がある。
そう思った俺は、ぬめぬめした森の中へ、ペタペタと四つん這いで進んでゆく。
――この時の俺は未だ気が付いていなかった。
俺はただのトカゲではなく、とんでもない存在に転生してしまったことを!
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