火属性強化のバフスキルと魔法使いな女子高生
(うわぁ、酷い……)
なんとかうまく着地できた俺は、一面焼け野原に変わり果てた森のを見て唖然としていた。しかし、あそこで火を消さなければもっと酷いことになっていた筈。
きっと自然の力なら、こんなのかすり傷程度であっという間に治してくれると信じて疑わなかった。
そんな中、俺の視界で再び文字が明滅している。
FPが規定値まで溜まりました。
”火属性強化”を使用可能にしますか?
勿論YESを選択。
<あなたの情報>
【名称】:サマランダー
【種族】:精霊
【属性】:火
●属性スキル:ファイヤーブレス、ファイヤーボール、ファイヤーボルト、熱耐性
●物理スキル:ひっかく
●特殊スキル:魂の捕食、火属性強化
●エクストラスキル:ソウルリンク(*発動条件あり)
FP:0
(そういえばあの女の子大丈夫かな……?)
俺は体重が軽いからあの高さから落ちても平気だった。
だけどあの子は人間だし、あの高さから落ちたとなると……
(いやいや考えるな! 大丈夫だよ、きっと!)
ふわりと嗅いだ覚えのある匂いが鼻を掠める。
はて、何かと頭を捻ると、すぐさま少し前の記憶と匂いが結びついた。
(これあの女の子の匂いだ!)
女の子の匂いが分かる自分にちょっとキモさを感じて苦笑い。
しかしそれよりも心配が勝っている俺は、足を交互にペタペタと動かして、匂いのする森の中へと飛び込んでゆく。
「ギュオ!」
(ごめん、今邪魔!)
俺は目の前に現れたゴブリンをファイヤーボルトで撃ち抜き倒す。
捕食するのも忘れて横切り、必死に匂いを辿って前へと進む。
すると木々の向こうに見えた、ぽいんぽいんと揺れるメロンが二つ。
(良かった、無事だ!)
女の子はしゃんと両足で立って、森の中を歩いていた。
ところどころに擦り傷は見えるけど、深手は負って無さそうだった。
代わりに羽織っている赤いマントが盛大に破れている。
(たぶんマントが木に引っかかって減速できたんだ、きっと)
彼女は破れたマントなどまるで気にせず、周りをきょろきょろと見渡しながら、歩き続けている。
(あの子、なにしているんだろ? 何か探しているのかな?)
俺はこの世界でたぶん唯一人語で交流できそうなセーラー服を着た女の子と話そうと草むらをかき分ける。
「ワオワオーン!」
「ッ!」
その時突然、彼女の前に毛むくじゃらの犬顔をした獣人達が姿を現した。
鑑定が自動的に発動する。
★鑑定結果
【名称】:コボルト
【種族】:獣人
【属性】:木
【特徴】:凶暴な獣人。ゴブリンよりは強い。目の前にいるのは若い雄の集団。ただいま絶賛盛り中!
(”よりは”ってあるけど、結構怖いんですけど、狼男! てか概要がどんどんハイテンションになってますけど?)
しかし女の子は臆することなく、手にした杖を掲げた。
杖が赤い輝きを強く放つ。
「ファイヤショット!」
響きの良い声と共に彼女が杖を振り下ろせば、宙に火の玉が沸いて、コボルトへひゅるりと飛んで行く。火勢はお世辞にも強いとは言えず、弱々しい。
「ワオン?」
そんな火の玉を浴びたコボルトは何をされたのか分からない、といった具合に首を傾げ、
「んー……」
彼女も納得行かなそうに顔をしかめて、”なんで?”といわんばかりに首を傾げる。
「グルゥー……ワオワオーン!」
そんな彼女へ向けて、コボルト達は盛った犬のように吠えながら、尻尾をふりふりして飛びかかる。その視線は勿論、彼女の胸にある立派な二つのメロンにくぎ付け。
下の方は……見なかったことにする。
(この変態ワンコめ!)
エロエロなコボルトの視線に悪寒を感じた俺は飛び跳ねて、間に割って入った。
鋭い爪を伸ばし”ひっかく”をコボルトの顔へお見舞いしてやる。
「キャルゥン!」
顔をひっかかれたコボルトは怯んで後ろに下がる。
その隙に俺は少し火炎を吐いてホバリング飛行のように姿勢を調整し、彼女の肩へと舞い降りた。
「大丈夫か!」
「んー?」
俺が声をかけると彼女は不思議そうにあたりをきょろきょろと見渡す。
「ワオワオーン!」
そんな彼女へ懲りずに襲い掛かる盛ったエロコボルト達。
「杖を掲げるんだ!」
俺は無我夢中で叫んだ。
「?」
「早く!」
彼女は言われた通りに杖を飛びかかるコボルトへ向けて翳す。
すると杖と俺の身体が真っ赤な光を放った。
「グワオォォォーンッ……」
杖から発せられた”炎の壁”にぶつかったコボルトは炎に包まれ、一瞬で消し炭と化す。
「んっ!?」
彼女は何が起こったのか分からないのか目を見開いて驚いていた。
★鑑定結果
【名称】:炎の巫女の杖
【概要】:炎の巫女を守る杖。巫女の魔力に応じて、炎防壁(ファイヤーウォール)を張り、敵の攻撃を防ぐ。
事前に鑑定しておいた彼女の持つ杖の詳細を見て、改めて安堵する。
(それにこのスキルも凄いな! これが”火属性強化”の力か!)
俺は視界の中で頼もしく明滅する新しい能力の力に感動を覚えた。
「次はファイヤショットを撃つんだ!」
「ん?」
「早く!」
なんとなく誰が喋っているのか分かり始めた彼女は、再び”炎の巫女の杖”を握りなおした。
「ファイヤショット」
響きの良い声と共に、真っ赤な輝きを放つ杖を振り落とす。
さっきの倍、それ以上かもしれない大きさと熱を持つ火の玉が浮かび、目の前のコボルトへ向けて突き進む。
「「グワオォォォーンッ……!」」
「おー!」
残り二匹のコボルトは強力な火の玉に飲み込まれ蒸発し、彼女は感動の声を上げていた。
(この子は俺と同じ火属性なんだ。で、この火属性強化はバフスキルの一種と。ふむふむ……)
「ねぇねぇ」
と、つんつん突かれる俺。
彼女は自分の方へ顔を向けて、俺のことを見つめている。
「もしかしてさっきのワイバーンとか、いま喋ってるのって、トカゲなの?」
顔も可愛いがそれよりも、大きくて立派な胸に視線が落ちる。
今やられたばかりのコボルト達の気持ちが結構分かる俺なのだった。
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