第8話 ネコの時間
猫と暮らしている。
三年前にシェルターから引き取ったメス猫。ノルウェージャンフォレストの血が濃く入ったミックスで毛は結構長い。
ベタベタするのを好まず、膝の上に乗ってくることなどまずない。その代わり適度な距離感を保って甘えてくる。
1メートルくらいの距離に近づいてきては、上目遣いで僕の目を見つめミャアミャア鳴く。そばによって撫でてやると目を細めてゴロゴロと喉を鳴らす。しまいには観念したかのようにその場にバタンと倒れこみ、ゴロリとお腹を向けるのだ。モフモフのお腹の毛並みを撫でていると、突然すくっと立ち上がり、お尻をフリフリしながら歩いて離れていく。そして1メートルほどの距離で立ち止まると、こちらを振り返ってまたミャアと鳴く。もう一度寄ってきて撫でなさい、の合図だ。
まったくとんだお姫様。
そんな我が家の猫、一日に16時間以上は寝ているように思う。起きている時間はきっと8時間もない。猫の寿命は15歳くらいと聞く。猫はかくも短い一生のうちの三分の二を寝て暮らしていることになる。なぜこんなに寝てばかりいるのか。ちょっと調べてみた。
「猫は肉食動物で、一度獲物にありついたら、次またいつ獲物と出会えるかわかりません。だからその時まで力を蓄えるために長い眠りにつくのです。決して怠け者という訳ではありません」
と書いてある。だが、僕の考えは違う。
一日の三分の二も寝ているのだ。猫にとっての現実世界はきっと夢の中にある。人間との生活はあくまでも仮の姿。そして、夢の世界では猫は敵と戦っているに違いない。異世界から攻めてくる敵から人間たちを守ってくれているのだ。だからこそ人間は、猫が起きているあいだ、感謝の気持ちを持って彼らに尽くさなければならないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます