第27話 窓辺の猫と森
僕の家は森に面していて、二階にある寝室の大きな窓からその景色を眺めることができます。本当にすぐそこが森なので、まるで森の中に家があるような臨場感なのです(木の枝が窓に届きそうなほど)。森は季節によってさまざな風景を見せてくれ、そしてたくさんの動物たちが住んでいる場所。
最もよく見かける動物はリスです。というか、ほぼ毎日見てます。体長20センチはあろうかという大型のリスで、茶色と黒の二種類がいます。彼らは季節に関係なく元気よく森じゅうを駆け回っており、巣穴からひょっこり顔を出したと思うと、勢いよく飛び出して行って、ほっぺたを木の実でパンパンに膨らませて戻って来るのです。はっきり言って可愛い以外のなにものでもないですね。ずっと見ていても飽きません。
さて、そんな森の風景を愛してやまない動物が我が家にも一匹。ノルウェージャンフォレストの血を引く猫のユリです。寝室の窓辺は彼女の特等席で、日がな一日森の見張りを行っては自宅警備員としての職責を全うしてくれています。
ユリは森に変わった動物を見つけると合図を送って僕に知らせます。小さな牙をむき出しにして、カカカっと声を出して威嚇のポーズを取る。それが珍しい動物であるほど彼女の興奮度は増すようで、どうにも落ち着かない様子で部屋中をウロウロし始めます。
では、ここからユリが見つけた珍しい動物ベスト3を紹介していきましょう。
第三位、シカ。
シカは決まって雪の降り積もる寒い冬の日に現れます。4~5頭の群れであることが多いので、もしかしたらいつも同じファミリーなのかもしれません。時間帯は夜か明け方。真っ白な雪面に足跡を残しながら悠然と歩いていきます。森の中で見るシカってどこか神聖な空気を身にまとっている気がするんですよね。僕はいつも野生のシカを見ると、もののけ姫を思い出します。
第二位はアライグマ。
最初に見かけた時はタヌキかと思ったのですが、調べてみたらアライグマでした。まさに縫いぐるみそのものが動いているような感じで、緩慢な動きもまた愛らしい。一度、うちのベランダにやって来たこともあるのですが、その時のユリの暴れ具合はそれはもう凄かったです。ガラス越しににらみ合うアライグマと猫。とてもシュールな光景でした。
第一位は七面鳥の群れです。
英語でいうところのターキー。サンクスギビングの祝日に各家庭が丸焼きにするというアレです。七面鳥はとても大きく、1メートルを超える個体もあります。全身真っ黒で首から上はピンク色。そんな鳥が10羽以上も集まって、まるで井戸端会議でもしているかのようにうちの裏の森に勢ぞろいすることがあります。七面鳥は年に一度見ることができればラッキーくらいのレア種なのです。
僕は動物が大好きなので、ユリからの報せを受けるとすぐに寝室の窓辺へ飛んでいきます。「よくぞ教えてくれた」と声をかけ、ユリのフワフワの毛並みを撫でながら、一緒に珍しい野生動物を眺めるのです。
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