第30話 金持ちになって不幸になった人たち
具体例を2つ紹介。
イギリス人のマイケル・キャロルさんは19歳の時に宝くじで970万ポンド(2002年当時のレートで約18億円)を当てた。当時キャロルさんは街のごみ回収のバイトをしていて、決して豊かな生活を送っていたとはいえず、銀行口座も開設できないほどだったらしい。
宝くじ当選後、突如舞い込んだ大金に有頂天になった彼は、家族や友人に気前よく7億円ほど配り、豪邸を建て、高級車を乗り回し、ドラッグ、ギャンブル、そして女遊びへと溺れていった。2003年の終わりまでにほぼ毎日三十万円分のコカインを吸い、毎晩のように豪邸でドラッグパーティーを開いたそうだ。行き過ぎた生活に妻は幼い娘を連れて家を出ていくが、キャロルさんは意に介すことなく売春婦らと退廃的な生活を続けた。性欲を満たす為に一日四回、八年間合計で二千人以上と寝たことを誇り、当時は「ドラッグ、セックス、金」の3つのことだけしか頭になかったと振り返る。彼は金や宝石をトレードマークに自らを「チャフ王」と名乗り、黒のメルセデスを乗り回してはこの世の春を謳歌していた。
しかし夢のような生活は長くは続かない。やがて2008年には手持ちのお金が八千万円まで減り、自慢の高級車を売り払うが、それでも2010年には破産宣告を受けてしまう。破産後は週五千五百円の失業手当で暮らすようになり、現在では昔のごみ回収の仕事をして生計を立てているとのこと。そんなキャロルさんは「今は全てが終わって嬉しい。大金よりも身の丈にあったお金で生活することの方が簡単だってことがわかったよ。昔はすごくいい顔で笑うことができたんだ。あの頃に戻ってかつての友達に会いたいよ」というコメントを残している。
まさに絵に描いたような転落劇である。
僕はこの話を知った時に不謹慎ながらも笑ってしまった。大金を手にした途端、自らの欲望に身を任せて大失敗した典型例である。本当にこんなマンガみたいな奴が存在するのかと疑ったほどだ。そもそも「チャフ王」って一体なんだよ……。キャロルさんは有名人なのでネットでも彼の姿を見ることができるが、チャフ王を自称していた頃の彼は極太のブリンブリンの金のネックレスやド派手な指輪やらをジャラジャラ身に着けて挑発的なポーズを取っているのだが、破産した後はただの冴えない小太りのおじさんに成り下がってしまっている。衝撃的な落差なので気になる人は調べてみてはどうだろう。
※注 Chavというのはイギリス英語のスラングでスポーツウェアを着た反社会的な若者を指すそうです。ちょっと納得。
ちなみに僕はキャロルさんのことを金持ちになって不幸になった人と勝手に決めつけて書いているが、実際に彼が不幸と感じているかどうかはわからないことは付け加えておきたい。本人も今は全てが終わって嬉しいと言っているようなので。
余談だが、和歌山の資産家が莫大な遺産を残して不審死を遂げた事件も記憶に新しい。紀州のドンファンと呼ばれた彼は美女を抱くためだけに金持ちになったと豪語し、実際に4000人の美女に3億円を貢いだそうである。彼は生前に自伝を出版しているのだが、その内容に僕は衝撃を受けた。彼はいわゆる札びらを切って女を買うタイプの男なのだが、街中でも電車の中でも、これはと思った女性には万札を挟んだ名刺を渡してナンパしていたそうだ。彼はこの方法で何人もの美女を抱いてきたらしい。世の中には色々な人がいるもんだと思っていたら、不審死が大きく報道されて二度びっくりしたものだ。報道を見る限り、晩年は随分と寂しい生活をされていたようである。
続いて二人目。
日本人で二年間で11億円を使い切った男の話だ。彼はYoutuberをやっており、僕が最近見た動画の中で最も感銘を受けた人物でもある。果たしてここに書いていいものか迷ったが、ご自身で世界に向けて発信しているので書くことにする。名前は明かさないが、調べればすぐ出てくるので気になる方は探してみて欲しい。
彼は小さな会社でゲームデザイナーをしていたのだが、会社が上場することになり、持ち株の売却で多額の利益を得た後、FXでも成功して11億円もの大金を手にすることになる。サラリーマンの夢であるセミリタイヤを決意した彼は、会社を辞めて優雅な一人暮らしを始めるのだ。
旅行に行っては高級ホテルに泊まり、美味いメシを食い高級な酒を飲む。初めの頃は地方の旧友を訪ねては食事をおごり、高級クラブに連れて行くようなこともしていたらしい。金にものを言わせて、派手に女遊びをしたこともままあったそうだ。そのうちに友人たちから距離を置かれるようになってしまい、海外旅行を頻繁に繰り返すようになる。そしてある日ふと我に返るのだ、あ~つまんねえなあ、と。高級リゾートに滞在していても観光する気分になれない。明日やりたいことがない。ということは明後日も来週も来年も、全く、なんにもすることがないということに気づいてしまうのだ。
そこから彼はアル中と化す。唸るほどの金はあってもどこか満たされず、日がな一日酔っぱらって気を紛らわせているうちにドツボに嵌まってしまったのだ。リーマンショックで資産を減らしたことも大きかったようだが、なんと彼はわずか二年で11億円を使い切ってしまった。どうやったらそんな大金を使い切れるのか想像もつかないが、豪遊を続けていればあっという間にお金はなくなってしまうそうである。一文無しになった彼は現在フィリピンで働いているのだが、大金を手にしても簡単にセミリタイヤをするべきではないと警告する。
曰く、セミリタイヤをしても上手くいく人と行かない人がいるので、まずは立ち止まって冷静に考えてみるべきだという。会社勤めにうんざりし、仕事なんてやめてのんびり暮らしたいと願う人は多いだろうが、同僚との仕事帰りの一杯や、たまの休みの家族旅行は実は何ものにも変えがたい喜びなのである。緊張と弛緩のバランスが大切で、毎日が夏休みになってしまうと、たちまち生活に張りはなくなり、何かをエンジョイするということが出来なくなってしまう。彼は大金を失ったが、仕事をする意味というものを別の角度から再認識することができたと語る。少なくとも今の仕事に多少なりともやりがいや生きがいを感じている人は、たとえ大金を手にしたとしてもすぐに会社をやめるべきではないのだ。ちなみに、本気で打ち込める趣味を持っていたり、家族と過ごす時間を大切にできる人であればセミリタイヤしても上手くいく可能性が高いそうだ。
実際のYoutubeでの彼はより多くの体験談を通じて、とてもわかりやすく、かつ実直に視聴者に語りかけてくれている。僕は彼の話を表面的にまとめているだけなので、気になる方は是非彼のチャンネルを探して見てみて欲しい。少なくとも僕にとってはとても興味深く、ためになる話であった。
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