第18話 僕の好きな言葉
世の中には名言や名文といわれる言葉が数多に存在しますが、今回はその中から僕が特に好きなものを一つ紹介させて頂きます。
では早速。
―この世に客として来たと思えばなんの苦もなし―
諸説ありますが、これはかの戦国武将、伊達政宗の遺訓とされているものです。本当は前後に続く言葉もあるのですが、あえて端折っています。
こんなにも爽やかな響きを持って、すうっと心を軽くしてくれる言葉があるでしょうか。実際、この言葉には僕も何度も勇気を貰っています。そしてこの言葉は深い。
良かったら、ここでちょっと立ち止まって、この言葉の意味を考えてみて下さい。
この世界には一時的に客として来ているだけなので、好きなように生きたら良い。どうせいつかは死ぬんだし。そんな心持ちで過ごしていればなんだってできるさ。
このように受け止められた方、間違いです。実はこの言葉は、それとはまるっきり逆の意味を持つのです。
誰かの家に客として招かれたとき、あなたはどのように振る舞うでしょうか?
礼儀作法を重んじるのは当然のこととして、招いて頂いたことに感謝の気持ちを持って、まずはそれを態度に表すはずです。多少不自由なことがあったって、客であるならば不平を言わず我慢する。そして、それを苦労と思うべきではない。
簡単に説明するとこのような意味合いです。
僕はこの言葉は、苦労して苦労して、苦しみ抜いた末に出てきた言葉ではないかと勝手に予想しています。でなければ、こんな言葉は絶対に出てこない。
伊達政宗は苛烈な戦国時代を生きた武将。
生まれてから死ぬまでずっと戦時中だったようなものです。しかも、国を率いていたリーダーですから、我々現代人には想像もつかないようなストレスや悩みを抱えていたでしょう。そんな男が人生の果てにたどりつき、心の拠り所としていた言葉がこれなのです。
目の前に大きな壁が立ちはだかったとき。
ここぞという大舞台でプレッシャーに押しつぶされそうになったとき。
僕は想像するのです。
トレードマークの黒の眼帯。独眼竜と恐れられた勇ましい日本の戦国武将の姿を。
そして、心の中で唱えます。
「この世に客としてきたと思えばなんの苦もなし」
伊達政宗ほどの男が、心の持ちようはこうあるべきだ、と後世に伝えたかった言葉です。僕が悩んでいること、恐れていることなど、不思議とちっぽけなことのように思えてくるのです。
これは生き方に対する心構えを説いた普遍的な言葉なので、死ぬまで心の中に忍ばせておくつもりです。年を重ねて、人生観が変わってくれば、この言葉の持つ意味合いもまた変わってくるのかもしれません。僕はそうやって、一生をかけてこの言葉を味わってやろうと決めているのです。
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