第19話 人生を変えた本

 僕の人生を変えた一冊の本を紹介します。


 それは、旅にまつわる本。


 旅の本、旅人のバイブルとして最も有名なものは沢木耕太郎の「深夜特急」でしょうか。小林紀晴の「アジアン・ジャパニーズ」を推す方もいるかも知れません。もちろん、僕はどちらの本も擦り切れるほど読みました。バックパッカーとしてアジアあたりを旅していると、このへんの本を持っている人が多いです。旅人の間では読み終えた本を交換する習慣があったりするので、旅人の手から手へと受け継がれてボロボロになっているものも見かけた覚えがあります。


 最近では、クロサワコウタロウの「珍夜特急」もなかなかでした。名前からしてパクリ臭が凄いので、あまり期待していなかったのですが、セカンドシーズンも含めた全15冊をあっという間に読んでしまいました。バイクで世界中を旅した男のノンフィクションです。


 よりディープな旅の世界を覗き見たいのであれば、丸山ゴンザレスや嵐よういちの本がオススメ。スラム街、ドラッグ、風俗など、このあたりのいかがわしい界隈に突撃し、その実体験を本にまとめてくれています。丸山ゴンザレスは、最近メディアへの露出も増えてきているので、知っている方も多いのではないでしょうか。


 前置きが長くなりました。では、僕の人生を変えた本を紹介しましょう。


 それは、ロバート・ハリスの「ワイルドサイドを歩け」です。


 ロバート・ハリスはイギリス人とのクォーターで日本人。何冊か本を出していますし、ラジオのDJもやっていたので、きっと知っている方もいると思います。


 当時高校生だった僕が、たまたま書店で見かけたこの本。なんだかカッコいいタイトルだし、アングラな雰囲気を醸し出す表紙も妙にそそります。パラパラとページをめくってみると、どうやら旅の本らしい。すでに「深夜特急」に重い一撃を喰らわされていた僕は、迷うことなくこの本をレジへと持って行ったのです。


「ワイルドサイドを歩け」は短編形式のエッセイで、ロバート・ハリスが自らの半生を綴った本。ここでは詳細な内容は書きませんが、この男の人生がもの凄かった。


 彼はとにかくこの世の全てを味わい尽くしたかった。女、ドラッグ、ギャンブル、裏の世界も含めて、興味のあること、そのなにもかもを自分で体験してみようと決めて放浪の旅に出たのです。書店経営、サラリーマン、ギャンブラー、小説家、清掃員、と様々な職業を転々としながら自由気ままに生きていきます。ラテン系の情熱的な女と恋に落ちる。ドラッグでトリップする。ギャンブルで生計を立てる。芸術家が集うサロンを経営する。うつ病になる。宗教にハマる。とにかく波乱万丈な人生なのです。

 

 高校生だった僕はこの本を読んで、素直にうらやましいと思いました。こんな風に生きてみたい。日本という小さな国を飛び出して、自分の目で世界を見てやるんだ、と心の底から強く思ったのです。まあ、それまでも予兆はありましたけどね。


 興味を持った方は是非「ワイルドサイドを歩け」を読んでみて下さい。他にも「エグザイルス」や「エグザイルスギャング」などの本も面白いです。とにかく悪魔的な魅力を持った本ですので、なにもかも投げ出して旅に出たくなったとしても責任は持てませんのであしからず。特に若い学生は気をつけて下さい。


 さて、こうして高校生だった僕の心の奥深くに、旅に出たい! という欲求の起爆剤が埋め込まれました。そしてこのあと、その導火線に火をつける出来事が起こります。この女のためなら死ねる、と本気で思った青春時代の恋とその別れです。


 次回からは、僕が旅に出る決定的なきっかけとなった学生時代の恋愛について書いていきたいと思います。興味のある方がいるはかわかりませんが(笑)

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