第32話 人生の意味

 生きることに意味はない。心臓は放っておいても鼓動を打つ。体が生きていることに意味はあるか? ただ生きているだけなのだ。


 人は言葉を操る生き物。因果関係がクリアにならないと不安になる。そういうふうにできている。ただそういうふうにできている。一体自分はなんのために生きているのだろう。猫は生きる意味を考えない。しかし、人にはその定義づけが必要なのだ。目的が定まればそこに向かってエネルギーを注ぐことができる。行き場を失ったエネルギーはぐるぐると同じ場所を回り続けて、地球が太陽の引力に引き寄せられるがごとく少しずつ内側に落ち込んでいく。


 要は自分がどう生きたいかということ。これが定まれば、内に渦巻いたエネルギーは奔流となって、一点突破し目標に向かって力強く流れ始める。すると、なんとまぁ生きることが楽になることか。


 現代人は生きることそれ自体が生きる目的にはなり得ない。社会が豊かになりすぎたのだ。


 庭を走り回る二匹の大型犬。デッキチェアに寝そべる私は、雲の切れ間から不意に差し込んだ夏の日差しに顔をしかめて読書を中断する。五年前に植えたレモンの木が、今年初めて色鮮やかな黄色い実をつけた。


 そろそろ腹が減ってきたな。お昼はサンドイッチでも作ろうか。卵サンドも作ればきっと妻も喜ぶだろう。縁側の引き戸を開け家に入ると猫が足元にすり寄ってきてみゃあと鳴く。そうか、おまえも腹が減ったか。今から準備するからみんなで一緒にご飯を食べような。

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うまのほねダイアリー ミトイルテッド @detlily

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