第20話 雪に還る

母の納骨は、死去三年が経過した春に行われました。


一部分骨をし、高野山へ永代供養をお願いしに、骨を納めに行きました。


どうしてか、母の骨を大切に抱えて歩くのは、自然と私の役目となりました。


四月。

桜もちらほら咲き出した頃でした。


でも、納骨の朝、宿坊の窓からはいちめんの雪景色が見えたのです。


なかなか四月にここまでの雪は積もりませんなぁ

と、朝のおつとめの際にお坊さんが言いました。


高野山は森林に覆われています。

森林さえ、真っ白になっていました。


その光景は忘れられない程の美しさでした。


私は、母がこの美しい自然界に還ってゆくのなら、すべてを許せる気がしたことを覚えています。

ゆっくりと慎重に歩きました。そうしないと、簡単に転びそうだったからです。


転ぶわけにはいきません。これは、私の勤めだからです。


このエッセイの第一章に、雪、というお話を書きました。今回のお話はどこかあの話につながっている気がしてなりません。


私もいつか、あの自然界へ帰りたいと強く願います。

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