第19話 愛

どうしても起き上がることができなかった。

パジャマから服に着替えることも、夕方までできなかった。


夕方までの間、2回少しだけパンを食べたり、りんごジュースを飲んでお薬を飲んだ。


すっかり眠りきったり、うとうとしている間に夕方を迎えてしまった。


カーテンは半開きにしていたようで、猫がいつの間にか足元で眠っていた。



容子(仮名)の愛って何。

と、突然問われた公園の景色が頭の中によみがえった。


珍しい質問。


例えば今ここで私におそいかかる人がいたら、とっさにかばってくれること。

愛があるな、と思う。


え、そんなん当たり前やん。

ちがう、俺ら今別れるとするやろ。俺、たぶんずっと容子のこと想ってる。


自転車を押しながら歩く彼の横を歩く。


なあ。


なに?


なんで自殺未遂するやつって多いんやろう。

手首とかさ。

無理やん、絶対。

痛いって。



俺、やるんやったら絶対確実なんやるわ。


なあ。


なによ。


容子、未遂してないやろう。


してない。



私は平気でうそをついてしまったな。

そんな昔の話を思い出した夕方だった。





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