第14話 いちご味
容子(仮名)、人生は一度きり。
家の二階のろう下の窓から、遠く遠くに見える都会の景色を眺めて姉は言いました。
まだ、学生だった頃に。
好奇心たっぷりで、うきうきした目が見えました。
私はその時、自分と姉は全く違う人間なのかもしれないと感じました。
姉は元々頭が良く、理解力に優れた人でした。
中学の時の成績は異常に良く、敏感だった私はそのことで、だいぶ苦しみました。
けれど、姉はそういう質なのです。無理していたのを見たことがありません。一夜漬け以外の姿を見たことがないのです。
私たちは仲が良い姉妹でした。
二人が高校生の頃、姉に誘われバーゲンに行ったりよくしました。
その日、帰りの電車が出発するまでに、姉は、ちょっと待って‼と走って改札近くの果物ジュース屋で、いちごジュースを買って、急いで戻ってきました。
やっぱ気になってしょーがなかった、と言って、勢いよく飲み始めました。
おいしい‼
飲む?と聞かれて、なんだか一連の流れと、その濃いピンク色のジュースがかわいくて、ちょっと笑ってしまいました。
なんで笑うん?!
いやぁ、お姉ちゃんらしいなーと思って。と答えました。
一口もらうと、とても美味しかったです。いちごの甘さがそのまましました。
私はこの流れは忘れないかもなぁと思いましたが、やっぱり鮮明に覚えています。
その後、私は電車の中で軽い不安発作が出ました。
胸が苦しく、呼吸ができてない感じがするのです。
姉は、急に黙ってかたくなった私を見て、何か精神的なものだとわかったようです。
いちごジュースを私の左手に持たせ、私の右手をマッサージし始めました。
変な人と思われるかな、とか周りを気にしながらも、懸命にさすってくれました。
不思議と呼吸は深まり、不安も消えました。
私の姉は、そういう人です。
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