第16話 田舎の海
海が恐い、と感じるようになったのはいつからなのかな。
成人して海と縁がなくなってからだと思います。
父方の田舎は海の近くで、小学生の夏休みはよくフェリーに乗って田舎へ行きました。
夕方の便に乗り田舎の家にたどり着くのは夜中に近かったです。
田舎はほんとうに田んぼと山しかない場所にあり、空気は都会とは全く違います。澄んでいて気持ちがいいです。
夏に帰っても、夜中だと少しひんやりしていた記憶があります。
初めて田舎の夜空を見上げた時は、星の多さに圧倒されました。
ほたるのおしりの部分が光るのを、父が捕まえて見せくれて感動しました。
田舎の朝は時間の流れがすごく遅いように私は感じていました。
あるのはテレビだけで、大自然の中、テレビや私達人間だけでは進みようのない時間の感覚を覚えました。
当時はその感じが少し苦痛でした。
他のいとこの家族が一緒のときもありました。にぎやかでした。
海水浴に連れて行ってもらいました。
海は行く場所により水の色がちがいます。
濃紺に光る海、浜辺は水色に見えて、場所によっては青緑に見えたりもしました。
その日は途中から天気が悪くなり、波が高くなってきたので、帰ろうかと父が言いました。
私は少し荒れて波立つ海を見て、あの波に乗りたい‼と言いました。
父は、は?という顔をしたが、私は真剣だったので、じゃあ何があってもお父さんの手を離すなよ、と父は私に言いました。
こっくりうなずいて、姉も来て、父を真ん中に三人手をつなぎ、海に入って波を待ち、大きめの波に乗りました。つもりが、飲み込まれた感じになり、私は手の力が緩んだが、姉は大丈夫だったのでしょうか。
父の手は最初から最後まできつくつながれていました。
もう、荒れた海はいいや、と実感したのかもしれません。
海は生き物のようにうねったりします。
湖とかは好きなのだけれど。
だから私はもう海に入ることはないだろうと思うのです。
側を通ることはあるかもしれないけれど。
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