第11話 食べもの
食べたいものがなくて、献立も全く思い浮かばなくて、買い物をしながら、どうしようとずっと思っていました。
適当に買ったけれど、お昼はオレンジゼリーと菊サブレしか食べれなかったです。
今日は一段と食欲がなかったです。
適当、ということを覚えて、何でも良いので食べて下さいな。と、昔母親に言われたことがあります。
母が亡くなってしばらくは、母の作った料理が食べたいとずっと思っていました。
でも今は、もう思いません。
この夏、暑くて食欲低下が続いているとき、母が夢に出てきました。
誘われて、私は母と買い物に行きました。
私は、丁寧に、自分が食べたいものを探していました。それを隣で母が見守っていました。
目が覚めて、私は母が何を私に伝えたいのか、私はすぐにわかりました。
食べたいものを食べなさい。
頑張って乗りきるんだよ、と、多分伝えたかったのだろうと思います。
基本的に、私は家事が好きなほうだと思いますが、病状によって、思うようにできなかったり、驚くほど疲れてしまうのです。
母親は食べることが好きな人でした。そして、とても美味しそうに食べる人でした。
私は幼稚園児の頃、人参が苦手でした。味が苦手でした。
でも、ある夕食の時、母が、人参も美味しいよ、と言いながら目の前でほんとうに美味しそうに食べました。
その光景は今も覚えています。
私も美味しく食べられるかな、そう思って人参を食べました。
不思議とまずいとは思いませんでした。
その日から今まで、人参をふつうに食べています。
母親は、不思議な人です。
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