第10話 ショタ化
「……いい眺めだ」
そう言ってニヤける魔王の目の前には、大量に積まれた本と超弱体化魔法石がある。色々あったが目的は成し遂げたのでそれで良いとしよう。
「とりあえず超弱体化魔法石を加工して…」
魔法石を手に取り、呪文を唱える。
「『
黄色の光が魔法石を包み形を変えていく。光が止むと手に握られていたのは、どこにでもありそうなネックレスだ。
「よし……早速つけてみるか」
正直普通のネックレスすぎて本当に効くのか怪しくなってきた。しかしネックレスに頭を倒した瞬間、全身を炎に焼かれるような激痛に襲われた。
「ぐあっ……!熱っ……い痛い……!!」
立っていることもできなくなり、木の床に倒れてしまう魔王。しばらくし焼けるような痛みが引いて来る。
「……くっ!一体何だったんだ?」
今の状況を判断する為、起き上がろうとすると……
ズベッ……ドタッ!
「う、うむ?」
なぜか服の裾を踏んで転んでしまった。この服は裾が長くないはずなのに……なぜだ?
ふと自分の手を見てみる。そこにはいつもより明らかに小さい自分の手があった。
「嫌な予感しかしないが……」
恐る恐る近くにあった鏡を見てみる。そこに映っていたのは……五、六歳の自分だった
髪と目の色は変わらないが肌は透き通る様な白になっており、いわゆる美少年になっていた。
「……なるほどな。あの魔法石にはこの様な効果もあるのか」
ブカブカの服の袖を口に当てながらブツブツと打開策を考える魔王。しかしすぐに諦めた様に俯く。
「まぁ、そこまで支障はないだろう。そんな事より今は魔術本を見なければ♪」
適当すぎる考えを導き出し、大量の魔術本を一冊一冊読み始める。自分のことより魔術本の方が大事な様だ。
「ふむふむ……今まで読んでいた魔術本は全て低級魔術本だったからな。この世界の魔術本も全て読破してみればこの姿くらいすぐに戻せるだろう」
自分の言い聞かせる様に言った独り言は、自分以外誰もいないリビングに無情に響いたのであった。
その頃、リザード城 客間
「だから何回も言っておろう!旅人の男がドラゴンを一撃で倒したんだ!!」
顔を真っ赤にさせ、リザード王は目の前のイスに座っているマントを深く被った男に怒鳴り散らした。すると体格の良い男騎士がリザード王を制する。
「リザード王、馬鹿なことは言わないで貰いたい。ドラゴン一匹を一人で、しかも一撃で人間が倒せるはずがないでしょう」
「まぁそう言ってやるな、タイマー。嘘を言っている様には思えん」
マントの男がそう言うと少し不服そうに男騎士は口を閉じる。
「ええ、私も未だに目の前で起こった事が信じられません。しかしこの話は真実です」
ところどころ怪我をしている女騎士セリーヌは淡々と話す。
「……ふふ、そうか」
マントの男は不敵な笑みを浮かべ、男騎士に命令する。その顔には玩具を見つけた子供の様な表情をしていた。
「今すぐに旅人で銀髪の男を探し出せ。今の話が本当ならあの作戦に使えるかもしれないからな」
「……御意に」
客間から男騎士が出て行き、マントの男も出て行くと、リザード王が太った体を揺らしながらため息を漏らす。
「……相変わらず陰気で偉そうな奴だ!!!気に食わんな!」
「しかしあのお方は知能明晰と大変有名です。あのお方でしたらあの作戦もきっと現実になると私は思います。
……ライセス城の王、ライセス殿下ならば」
セリーヌは少し赤い顔でそう呟く。
「うるさいうるさいうるさーい!!この僕に刃向かう気か!!?」
「め、滅相も無い!その様な事はありません!!」
リザード王がまた癇癪を起こし、セリーヌが平謝りをするのはこれが初めてでは無い。リザード王は後、三時間は拗ね続けるだろう
ーーこうして、事態は魔王を中心に回り始める。
一方その魔王は……
「な、なんだと!!この魔法はこの様な意図があったのか!!?」
森の奥で平和に何冊めかわからない魔術本をベットに横たわりながら読んでいた。
……これから起こる事件を気にも留めずに
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