第7話対峙

「はじめまして、リツです」

「はじめまして、藤木です。よろしくお願いします」


ついに始まった…

ガラス張りのミーティングルーム

その近くのデスクを、山田は朝から陣取っていた。

話は聞こえないが、何かあれば分かるだろう。

仕事をしながらさりげなく伺う。

正確には仕事は手についていない…


昨日リツは案の定、遅くに酔っ払って帰った。

話はしたのだけれど…

あいつの「心配するな」ほど心配なことはない。

余計なことだけは言ってくれるなよ…


1時間ほど経った頃

藤木が驚いた表情でこちらを見た。

嫌な 予感が する。

「では、よろしくお願いします」

リツが出てきた。

「じゃね、兄貴」

山田がリツを引っ張って外に出る。

「何言ったの!?」

「僕も奥さんにお会いしたことがありますって」

「言うなっつったろ!」

「あのさぁ、こういうことは最初に正直に言っとかないと、後で分かったりしたら信用なくなるだろ。ビジネスでは常識だよ」

「会ったことがあるだけ?」

「会いたいから、自宅に行きたいって」

「…やっぱり」

「藤木さん、いいって言ってたよ」

「当たり前だろ。それ、パワハラだかんな」


来週あたりでよろしく。

そう言い残してリツは帰って行った。

振り向くと、藤木がオフィスの中から

捨てられた子犬のような瞳で

こちらを見つめている。

思わず前へ向き直る。

あぁ…オフィスに戻りたくない…

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