第15話 真珠の役目

夕闇が迫る頃

土方会長はさくらと腕を組んで

パーティーへ出掛けて行った。


一抹の嫉妬を覚えたことは否定しない。

だけど。

たけどさくらは僕の妻だ。




出掛ける少し前

土方会長はさくらを部屋へ呼んだ。

「さくらくん、君にひとつお願いがあるんだ」

「はい、なんでしょう?」

「今夜のパーティーにミシェルという人が来る」

一枚の写真を差し出す

中性的な魅力の紳士が写っていた。

「この人を探して私のところへ連れてきて欲しい」

「わかりました」

「お連れしたら、私はミシェル氏と話があるから、君は先に秘書と一緒に部屋へ戻ってください」


会場へ着くと

土方会長はバーで待っていると言い

さくらと別れた。

しばらく歩き回ると

視線の先に、写真の男を見つけた。

「こんばんは、ミシェルさん」

「やぁ、これは素晴らしい東洋の真珠!

こんばんはマドモアゼル。どうして私の名前を?」

「土方さんという方に頼まれて来ました。

あなたにお会いしたいそうです」

「ヒジカタサン?」

「はい」

「キミが連れていってくれるの?」

「はい」

「そう…じゃあ、行こうか」

そう言ってミシェル氏は肘を差し出した。

さくらは腕をからめ、ゆっくり歩き出した。


「ミシェルさん、こんばんは。土方と申します」

「こんばんはムッシュ。私に何か御用ですか?」

「ええ、あなたにお会いできて本当に嬉しい。しかし、その前に。

私の宝石を返していただけますか?」

土方会長はそう言って、さくらに手を差し伸べた。

「あぁ、これは失礼」

「ありがとう、さくらくん。思った通り、君は素晴らしい」

笑顔で応える。

「では失礼します」

ミシェル氏が名残惜しそうに手を振った。

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