第12話恩恵
パスポートも取りに行って
サイズ合わせもした。
さくらはエステに通えてご機嫌だ。
妻がキレイになると、僕にも恩恵がある。
「あ、ローション塗らなくちゃ」
お風呂に入ろうとしたさくらが
そう言って戻ってきた。
「僕が塗ってあげるよ」
「えっ、いいよ!自分で出来るから」
リビングに置いてあったエステサロンの紙袋からローションを取り出しながら
恥ずかしそうに言う。
「いいじゃん、旦那なんだし」
「だってお風呂上がって体拭く前に塗るんだよ?」
「いいじゃないか」
ニンマリ笑う僕を見て
「ヤダ!なんかヤダ!」
そう言ってバスルームへ逃げて行った。
上がってくる時がチャンスだ。
「カチャ…」
バスルームのドアが開く音がした。
藤木は急いでバスルームへ行く。
「きゃ!」
「はい、塗りまーす!」
「えー!だから恥ずかしいって!」
バスタオルを胸の辺りで握りしめ
後退りするさくらに
「じゃあ、後ろ向いて」と促す。
さくらは見られるのがダメなようで
昔から、あまり体を見せることは無かった。
産後、ボディラインが崩れたり
妊娠線の後が消えなかったり
そういうことで、さらに見せなくなった。
僕はちっとも気にしてないのに。
産後の変化は僕にとっては
むしろ愛しい。
「じゃあ、ライト消して」
いつものセリフ。
脱衣場のライトだけ消して
バスルームの明かりだけにした。
薄暗い中で
さくらの背中のシルエットが浮かぶ
ちょっと引き締まったな。
そう思いながら
背中にそっとローションを塗る
さくらがピクンと反応する。
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