第33話 前進

「おーい!もう行くよー」

タクシーのトランクに大きな荷物を詰める。

「テンちゃん、行くよ」ナナが声をかける。

「うん、今行く」

テンは藤木の写真に語りかける。

「パパ、明日からロサンゼルスだよ」





藤木さんの三回忌を終えて

ジンの高校入学を機に、俺たちはロサンゼルスに引っ越すことにした。

家は兄貴の家族に使ってもらう。

いずれは戻るつもりだ。

子供達にとって、ここは生家だから。


向こうにもみんなで暮らせる家を買った。


日本を発つ前に

子供達にお願いして親父に会ってもらった。

「リツ兄ちゃんのパパに会ってみたい」

そう言ってくれて嬉しかった。

「じぃじ!」本当にこの子達は人懐っこい。


「いつでも遊びにおいで。日本に帰って来たときは家に泊まってくれよ」

親父は

喜んでいた。


血の繋がりは、兄貴に任せて

俺は俺のやり方で

関係を築いていきたい。

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