第25話 伝えたいこと

あれから、さくらは塞ぎこんでいる。

子供達は学校へ行くようになったが

さくらは部屋から出てこない。

子供達が心配して代わる代わる様子を見に行き、リョウカが果物の皮をむいて持っていくと少し食べるが、それ以外は口にしない。


リツくんは毎晩、様子を見に来てくれる。

小さな花束を持って。

子供達のケアもしてくれて

さすが、僕が見込んだだけのことはある。

ん?見込んだのはさくらかな?




ある冬の夜。

子供達を寝かしつけた後

リツくんはソファーで居眠りしていた。

気がつくと、キッチンにさくらがいた。

「さくらさん…」

やつれきっていた。

「リツさん、いつもありがとう。頼りなくて、ごめんなさいね」

そう言って、さくらはコーヒーを淹れはじめる。

「いいよ、俺やるから座って」

さくらに歩みより

マグカップと一緒にさくらを抱き締めた。

柔らかかったさくらは

今にも消えてしまいそうなほど

細く、小さくなっていた。

「悪いのは私なのに…ごめんなさい…」

座り込んで泣くさくらを抱き締めながら

「預かってるものがあるんだ」

リツくんはそう言った。



ロサンゼルスから戻ったリツくんに

話があるから時間をとって欲しいと連絡したが、なかなか会って貰えなかった。

きっと、さくらとの仲を咎められると思ったのだろう。

しかたなく僕は

リツくんのオフィスがあるビルのロビーで

待ち伏せすることにした。

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