第19話ひざまくら
「リツ兄ちゃん、お馬さんして!」
「ダメ!私とババ抜きするの!」
「はいはい、順番ね」
「リツくん、面倒見いいね」
「そうですね、親戚で集まったときも
子供達はみんなリツに群がりますよ」
「いいお父さんになるよ」
「ハイボールおかわり!」
「ハイ!喜んで!」
「お酒も作ってくれるし、よく動いてくれるよ」
ハイボールを持ってリツが来る。
「仕事離れたら自分が一番年下なんで動きます!」
「いいねー!その体育会系精神!」
「あざーす!」
違う。おまえはさくらさんのそばに居たいだけだ。
藤木の肩越しに
キッチンにいるさくらとリツが見える。
リツがさくらにあーんをねだっている。
さくらが箸で唐揚げを摘まんで、あーんをする。
まずい…藤木さん、今振り向かないで。
「藤木さん、コレすごくおいしいですね!」
「それウマイよね。俺も好き」
なんで俺がフォローせにゃならんのだ。
早く離れろ!
みんなが酔いつぶれて寝てしまった後
さくらとリツが片付けている。
「さくらさんって言うんだ」
「そうなの」ふふっと笑う。
「会いたかった」
皿を洗うさくらを後ろから抱き締める。
「ダメですよ」皿洗いの手を止める。
「少しだけ」
「少ししたら、おしまいにしてね」
「なんか、子供に言うみたいだな」
一年ぶりの花のぬくもり。
やっと
眠れる。
「眠くなったから、ひざまくらして」
「ほんとに子供みたいですね」
久しぶりのひざまくらで
子供のように眠る。
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