第17話閑話* 黒

 学校のチャイムの音がする。

「おはよう」

黒の幼馴染の武が、朝の挨拶をする。

「おはよ」

「今日は体育で徒競走の練習だって。面倒だな」

 うんざりした様子で、武がつぶやく。武は足が遅いから、徒競走がさぞ憂鬱だろうと、黒はほっと、している。もし武の足が速かったら、黒の足が遅いことが目立つからだ。

「本当に面倒だな」

黒だって、何が楽しくて、徒競走に出なくてはならないのか、分からない。


「俺は楽しみだけどな、徒競走」

梅子が走って、黒と武の元へやってくる。

梅子は今日も美人だ。黒は梅子のことが好きだ。

「女の子が体育姿で、ぼいんぼいんだよ?最高じゃない?」

にやにや梅子が笑っている。

梅子は同性愛者ぽいので、黒は梅子への恋愛感情を言うことはしなかった。


運動会のある日、黒の体調が悪くて、保健室で休んでいると、武が黒の元へと訪れてきた。

武はにこにこ笑って、黒の頭を撫でる。まるで子供のように黒の頭を撫でるので、馬鹿にしてるのかと、黒は武の手を叩く。

「馬鹿にしてんのか!」

しかし武はにこにこ笑ったままで、黒のことを抱きしめてくる。

「大好きだよ、黒」


武の様子がおかしい。そうその時に黒は気づいたのだった。


「お前いちいち俺に抱きついてきて、気持ち悪いよ」

 一度そう黒は、武に言ってみた。

放課後いつも武はにこにこ笑って、黒の頭を子供のように撫でてくる。

「はぁ?俺にそれをやった意識はない」

「やめろよな」

そうはっきり武にいってやった。


「なんか武の様子おかしくない?」

梅子が黒の元にやってきて言う。黒は頷く。

「武、夢遊病なんだって」

「夢遊病?」

 黒は首を傾げる。夢遊病?聞いたことがある様な、無いような?


「だから手伝って」

 そういって梅子は一つの本を、黒に差し出してきた。

「なんだこれ?」

その本は催眠術とかかれていた。

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