言葉にしなければ、伝わらない。

赤沼たぬき

第1話プロローグ?

まず初めに言うことは、一宮武は引きこもりだ。

もう数年引きこもっている。一宮武はベッドの上で溜息を吐き出す。

何故一宮武が引きこもったかというと、幼馴染の花梅子をレイプしたらしいからだ。


武が引きこもる前に、幼馴染の花梅子という変わった名前に呼び出されて、こういわれた。

「あなた、俺をレイプしたんだから、責任とって結婚して」

梅子は自分のことを俺と呼んでいる。


「俺がお前をレイプしたっていうのか?」

「うん」


頭がパンクしそうになる。武は恐怖で震える体を叱咤して、なんとか口を開く。

「その……証拠は? 」

「そんなのあるわけない。武は夢遊病でしょ?記憶なんてあるわけないじゃない」


レイプをしたらしいという断定できない言葉なのは、一宮武自身には花梅子をレイプした記憶がない。どうやら一宮武は夢遊病らしいからだ。


「確かに、俺は夢遊病だが」

「なら、責任とって、結婚して」

「まてっ、まて!」

ずいずい梅子が、武の間近に迫ってくる。武は反射的に、梅子から距離をとる。

「俺はそもそもゲイだ。女と結婚するのは、無理だ。第一、お前も同性愛者だろう?」

常々梅子は自分が、ビアンだと言っている。

「まぁ、そうだけど。俺さ、お前に言ってなかったんだけれど、俺、バイだから」

「バイ?」

「バイセクシャル。男も女も好きってこと」

あっけらかんと梅子はそういう。武は戸惑う。

「バイっていう意味知っているけど。悪いけど、俺がお前をレイプしたって、信じられない」

「ならいつか証拠見せるから」

「あ、ああ」


その時の武はそういったが、なんだか怖くなって武は梅子と二度と会わないように、家に引きこもることになったのだった。


 武の父親は今のところ武が引きこもっていても、何も言わない。父親は放任主義で、武については何もいったことはない。武の母親には、「引きこもるのは、一か月だけよ。それ以上は塾通いでもいいから、勉強しなさい」と、そういわれる。

武も別に学校などで問題があって引きこもりになったわけでもないので、それはいいのだが…..。

以前から武には夢遊病のくせがあった。夢遊病で意識がないまま武は父親に、怪我を負わしたことあったらしい。武の父親は武のことを徹底的に避けるようになってしまった。

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