第26話エピローグ



夜鴉の羽ばたく音がする。武は部屋の窓を開ける。そこには鴉男が座っていた。


「ようやく全部思い出したんだねえ」

鴉男がにこにこ笑う。

「お前は?」

鴉男の顔が、武自身の顔になって行く。そして、梅子の顔にも、黒の顔にも。

「人の想いというのは不思議だね。私を生み出したのも、人の想いだ」

武の顔した鴉男の手が、武の頬に触れる。

「そうか、お前は」

鴉男は、武に口づけた。

武は両手を伸ばして、鴉男にすがりつく。

「消えたくて仕方がない自分自身だったんだな」

そのまま二人は部屋の中から消えた。

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言葉にしなければ、伝わらない。 赤沼たぬき @duhiyutou

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