第12話

行く場所帰る場所。やっと帰れる。武はほっとして、家の道への道を歩く。その間絶対寝ないことを自分自身で決める。

曲がり角を曲がろうとして、武の目の前に車が現れた。そしてそのまま武は車にはねられた。


なんと不運なのだろう?雪山から交通事故かよ。 


こうして武の意識も吹き飛んだ。



誰か幼い女の子が泣いている。

武はその女の子のことを迎えに行かなければいけないと思うのに、体が動くことができずに、そのまま海の底へと沈んでいった。


「御母さん、大変!鴉さんが溺れている」

「ほうっとおきなさい」

 交通事故にあい、気が付いたら武は、池の上で溺れていた。

「だ、誰か、助けて!!!」

 そう武は自分で叫んでいるはずなのに、口から出た声が「カーカー」と、鴉の鳴き声だった。


「鴉さん、もう大丈夫だよ」

そういって武を水のなかからすくいあげてくれたのは、小学生の姿の花梅子だった。

 

 梅子と武の付き合いは幼稚園からだ。それから中学生の今でもご近所づきあいしている。梅子の年齢は今現在中学生のはずだ。それなのに、今の梅子の姿は小学生にしか見えない。


梅子の家に連れてこられた武は、衝撃の事実に気付く。うすうす気づいていたが、鏡の前に武がたつと、そこには鴉の子供の姿になっている自分の姿が鏡に映っていた。


つまり武の姿は人間ではなく、鴉の子供の姿になっていたのだ。

「なんだこりゃあああああああああああああ」

衝撃で武は死んでしまいそうになる。

これは、夢。

これは、夢なんだ。

武は自分にそう言い聞かす。


「鳥さん、可愛い」

梅子の幼い手で、頭を撫でられた。

一体全体どうしたら、武は家に帰れるのだろう?武は黒いふさふさの頭でうなだれた。

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