第4話閑話* 公園と少女と猫
田中菫の母親も父親もいつも遅くまで帰ってこない。だから、菫は小学校の友達が帰った後も、一人で公園で遊んでいる。
公園には野良ネコがたくさんいるし、菫は寂しくない。
野良猫と子供しかいないつもの公園に、変わった珍客がいた。中学生くらいの男の子が、何故かベンチで眠っているのだ。中学生の男の子は完全に不審者なのだが、野良ネコは妙に中学生の男の子に懐いて、眠っている男の子の周りに、二十匹以上の野良猫が群がっている。
野良ネコは、菫に特別懐いてくれているので、正直面白くない
ベンチの上で眠っている男の子が目覚めると、警戒している菫の方を見た。
「やあ、初めまして。猫は可愛いね」
菫は頷くと、男の子から距離をおいて、野良ネコを撫で始めた。
「この猫は藍という名前で呼ぶことにしたんだ。よろしくね、藍」
突然男の子が猫に話しかけると、猫はなんと菫の方を見て頷いたのだ。
「よろしくな」
そう、そう猫が話したのだ!菫は腰が抜けそうになる。
「猫って、話すの?」
菫は警戒してることも忘れて、男の子に話しかける。男の子はやさしく頷くと、微笑んだ。
「猫は話すよ。ここの猫たちはみんな君のことが大好きで、心配している。遅くまで公園にいるのは、危ないよ」
優しく男の子が言うので、菫は泣いてしまう。男の子はためらっている様子で、菫の頭を撫でる。
「おうちに帰ろう」
「うん」
菫は頷く。
「あなたの名前は?私は菫って言うの」
「俺は、武だよ」
「また遊ぼう」
菫がそういうのに、男の子は物悲しそうに微笑むだけだ。
菫は何度も公園でその男の子を探したが、その男の子に会えなかった。小学校で野良猫が話したことを親友の田口綾子やクラスの子に話したが、誰も信じてくれなかった。
けれどもあの猫が話したことを忘れず、菫は動物のお医者を将来目指そうと思う。あの公園に現れた裸足の男の子は今でも何者なのか、分からない。
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