第19話


「おはよう、武君」

 微笑む黒が、武の方を見る。武の心臓はすくみあがった。

「俺さ、お前にレイプされたんだ。どうしてくれんだ?」

「いやいや、そもそも、お前が俺のことを殺そうとしたんだよな?」

「はぁ?お前は何言ってるんだ?俺がお前を殺そうとするわけないだろう?親友なんだから」

けらけら黒が笑う。武は心底黒が今の状況を楽しんで、どこか馬鹿にしているのを感じてた。

「…….なにがおかしい?俺がお前をレイプしたって、証拠があるのかよ?」

「ある。ほら」

黒は武に向かって、スマフォの画面を見せてきた。

そこには武が裸で、黒の上に覆いかぶさっている映像が見えた。そんな記憶は武の中にはない。

武は自分自身に、ぞっと、する。


俺はレイプしたのか?本当に?


「警察に行ってもいいんだ、武」

「そんな、俺は」

俺は、なにもやっていないのに。

「だけどそれはやらない。そのかわり、武、さっさと、梅子と、別れろよ、ホモ野郎」

黒の中の武への悪意を、この時武ははっきり感じ取った。

「お前、やっぱり俺のことを殺そうとしただろう?」

「夢見すぎだろう?寝ぼけてんのか?病人」

「なんで、俺はお前のことを本当に友人だと思っていたよ」

「その友人とやらをレイプするのか?さっさと出て行けよ、ホモ」

黒がそういう。

武は悲しくなって、俯く。

「さようなら、黒」

もう二度と武は黒と話すことはないだろう。そう思い、武は離別のため、ベッドから立ち上がった。

「ごめん」

人を無意識に傷つけてしまう、武は自分自身が怖くなった。

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