第25話 思い出した。

学校のチャイムがなる。


「おはよう、武」

「おはよ、武」

武の右手を梅子が握る。反対の手を握る。武の背後には、あの黒い鴉の頭をした男が立っている。

「梅子、黒。もう俺に催眠の暗示をかけるのはやめてくれ」

「へぇー、武、思い出したんだ」

 にっこり黒は微笑む。

「…….武思い出しちゃたんだね」

 悲しそうな梅子の顔。

「ああ」

「俺、武と結婚したかった」

「ごめんな」

「梅子の腹の子は、武の子供かもしれないだろう?」

「違うだろう?俺、全部思い出したんだ。俺と梅子は寝ていない。子供ができるわけがない」

「ごめんなさい。武」

「俺、梅子のこと大切に思っている。子供がいなくってもさ」

「武、俺は?」

黒が武に抱きついてきた。

武の全身に鳥肌がたったが、武は我慢する。

「お前俺のこと殺そうとしただろう?」

「うん。武がつらいこと思い出しそうになったら殺すって、約束しただろう?」

そう武は黒に頼んだのだ。辛かったら死ねる様にと、黒に武は暗示をかけてもらうことにしたのだ。

「俺、もうしなない。夢遊病の治すことにしたんだ」

本当の気持ちを言えずに、武は夢の中に逃げた。苦しいかもしれないが、自分の気持ちは自分で抱きしめることにしたのだ。

「おはよう」

そう武は微笑んだ。

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