概要
近未来か現代か。
密かに実行された或る作戦があった。秘密裏での遂行を要求された、国境を越えてのミサイル基地襲撃作戦。人型ロボット、イソラを用いた秘密作戦。
イソラ――。其れは、深海に眠っていた狂気。
今、国に恋する老人と志に殉ずる青年が後戻りできぬ、狂気の段へとそぞろ歩む。
結果は確定した道筋で、彼らが視るものは? そして、最後に抱く心は?
其処から始まるのは、世界の裏側を支配する勢力との抗争、そして、祖国を守らんとする青春の猛々しい血の滾りだった。
安曇野正義。
イソラを擁する安曇野警備保障を率いる長にして、国に恋する謎多き老人。
熱田大義。
年月を重ねた安曇野正義とは異なる、殉死と憂国に燃える、死神の青年。
青年こそが老人を生かしたのか。或いは、青年こそが老人に
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!深海の死闘、闇に蠢く深謀遠慮。その果てにあるのは……
個人的な私見だが深海という舞台は国家や組織の謀略が衝突する場所として適切だと思う。
地上や空中とは違い人目につかず、放り出されば絶対の死の世界は敗れたものに生を許さない。
第三者がいないはずの深き深海で行われし、本来は誰かにみせるはずの浄瑠璃をモチーフとした人型兵器の戦いをもってくるアイロニー、構成が上手い。
ですが、この戦いですら本作の前座にすぎません。
その後に起こす行動こそ作品の本質、テーマです。
詳しくはネタバレになるので書きませんがこの行動は誰かに強制されたものではありません。
本作は人形浄瑠璃をモチーフとした作品だが、行動を起こした者たちは誰かの操り人形かと言えば否である。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!今、カクヨムで最も熱い軍事SF!
読んだらきっと貴方に刺さる格好いい軍事SFです。
キャラが美しい、メカが美しい、戦の一つ一つが美しい。
元から作者の藤井機斎様は重厚な文章を書く方でしたが、今回はそこに読みやすさへの工夫が加わることで、あっという間に引き込まれる物々しい美文が生まれています。
その中で舞う“和”のテイストに溢れたキャラ、メカ、思想、戦争、いずれもため息が出るほど美しい。
その美しさで描くのが軍事SFですよ。
やばいです。ややもすれば重苦しく泥臭い感覚さえ有るミリタリが、作者様の魔法で幽玄な世界へと変貌する。
ゾクゾクとしながら一気に読んでしまいました。 - ★★★ Excellent!!!渋いロボ物。まるで三国志や時代小説のような、そんな世界。
まるで濃厚な歴史小説を読んでいるような感覚に陥りますね……それ程に、このイソラは古き良き『和』の要素を感じる。
まずイソラと呼ぶ、古代兵器を現代の技術で蘇られたとされるロボット群。装甲車を相手に戦う姿は、まるで武者のそれ。舞うように、幻惑するように装甲車を相手にする。そんな様子がこの文から読み取れますね。
また作中の至る所に、いわゆる藤井イズム的な作風が感じられる。泥臭さ、伝奇、世界の暗さ(闇の中でネオンが光るようなそんな感じ)などなど、そういったのが好きな方には、実にもってこいですね。
これはまさに、文学的ロボ小説とも言える作品です! - ★★★ Excellent!!!鮮烈に輝き散る男たちの段――暗き深海より
<18.6/25追記>
語弊を恐れずに言うのなら、読者は彼らを理解できなくても良い。国に恋する、国を護る、国を生かす――彼らが掲げ、全てを費やしても良いとさえ考えているような、その理想をだ。
本作を読了した今、このイソラという物語を、敢えてそういった思想の物語であるとは括りたくない。そう括ってしまえば、途端にイソラという物語は陳腐と化して、鮮烈に輝き散った男たちの段が霞んでしまうだろうから。
恐らく、物語としての本質は、一つの夢と理想と憤りに身を投じた男たちの有り様そのもの。そう思えるほどに、発掘兵器イソラに重なる彼らの有り様が美しい。
常人では殉ずる事の出来ない理念を、それに己の全てを持…続きを読む