概要
「デジタルデータは愛を表現するか」
幸福だった少女時代、テロリズムで全てを奪われた彼女は、ただひとつだけ残された歌声を電子の翼に変えて、連邦捜査局のエージェントとして絶望の淵からはばたいた。
そう遠くない時代のニューヨークで、くたびれた老犬のような中年男をバディに、無表情な看護ガイノイドの介助で凶悪な犯罪と戦いながら、彼女は過去の忌まわしい事件の直前に託された謎めいた言葉を追う。現実と拡張現実、そして仮想現実からなる三層の現実の深奥を、たぐいまれなる歌声が照らすとき、本当の戦いの幕が切っておとされる。
毎日夜の六時に新しいエピソードを公開します。粗熱がとれないう
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!仮想空間に奇跡の歌が響く 神話と融合したSFクライムストーリー
近未来を舞台に宗教組織に絡む犯罪と対峙する事になった車椅子の捜査官クレア=モーリスの活躍を描くSFクライムストーリー。
物語の背景にあるヴェーダ神話・ブラーフマナ神話のエッセンスと、劇中に於いてクレアが使用し、仮想空間内で魔法にも似た奇跡を可能にする独自のコマンドプロンプトである“歌”によってSFとファンタジー要素を併せ持った世界観を構築している。
この歌を奇跡のコマンドとして解釈する手法は2000年代にゲームサウンドクリエイターの土屋暁氏等が提唱して以来、魅力的な設定に反して音楽方面に相応の知識を要するなど扱いの難しさから小説ジャンルでは中々有用に使いこなせる書き手が現れない要素である…続きを読む - ★★★ Excellent!!!電脳の歌姫が指し示す、人間とAIの進化の先。
四肢麻痺ながらも、電脳情報戦エキスパートとして対テロ捜査官となったクレア。
歌声をコマンドとして電脳空間を舞う姿は、インド神話の迦陵頻伽と噂される。
昼行灯みたいなおっさんダニエルを相棒として、テロとの戦いに身を投じるが。
過去、事件に巻き込まれて生身の躰を失ったクレアは、全身サイボーグ。
しかしそれでも、脳の機能の欠損は補えず、四肢の自由は戻らない。
女性型介護アンドロイドのシュリが常に付き添い、彼女の世話をする。
全く人の名前を覚えず、突然『孫子』とか呟くダニエルがいい(笑)。
意見が一致してしまったときの、クレアの「遺憾ながら」が最高なわけですよ。
ダニエル、やるときゃやるんですが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!サイバーパンク×摩天楼×インド神話! 才媛は歌声の翼で電脳空間を翔ける
クレアの満ち足りた少女時代は突如として終わりを告げた。
連邦捜査局に勤める勇敢な父、脳科学の研究に従事する母、
クレアが気に掛けてやまない義理の妹、そしてクレア自身。
新興宗教が引き起こした自爆テロがすべてを奪っていった。
物語は、機械化躯体を得て生き延びたクレアが捜査官となり、
配属先でバディのダニエルと出会うところからスタートする。
ニューヨーク市マンハッタン区、ミッドタウンの中心にある
連邦捜査局国家公安部のテロリズム対策課がクレアの配属先だ。
車椅子と介護ガイノイドの介助によって生活を送るクレアは、
電脳空間における指示や操作の全てを「歌声」でおこなう。
その独特で美しい仮想現実…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人と電脳と愛、美しきサイバーパンク
近未来SF×電脳空間×犯罪捜査という王道サイバーパンクの本作、これだけでも読み応え抜群ですが、とにかく『人の表現』がとても上手い!
本作に使用されている情景描写、心理描写、形容から動作などの表現は輝く宝石の如く美しく鮮やかで、それらの巧みさに魅了されました。
また、それを可能にしているのは筆者の豊富な知識であるという事も、織り込まれた表現から読み取ることが出来ます。
登場人物、特に天才新人のヒロイン×ベテランのおっさん捜査官のバディは相性抜群。ちぐはぐな二人の掛け合いはやみつきになります。
他にも臨場感溢れるアクション、重厚的でシリアスな物語の中に垣間見るユーモラスなど、ハマる要素が盛り…続きを読む