主人公の結ちゃんが、健気で一生懸命でなんとも愛らしいのです。応援せずにはいられません!
とっても控えめで人との距離を置きがちな結ちゃんですが、ちょっぴり不思議なアルバイトを始めたことをきっかけに、内向きな気持ちが少しずつ動き出します。
色々な人と、さらには人以外の存在とも関わり合って向き合って、一歩一歩成長していく結ちゃん。そのひたむきな姿に、何度も胸を打たれました。
結ちゃんが出会う人々、そして化生のものたちは、個性豊かで愛着のわく人たちばかりです。みんな複雑な想いと事情を抱えていて、その様々な視点が物語に彩りと奥深さを与えています。
ほのぼのとした中にも危うさや切なさがあって、そこがたまらなく好きでした。良いことばかりじゃないけど、関わりや繋がりって、やっぱり素敵だよね、と思わせてくれるようなあたたかい余韻が格別なのです!
縁にまつわる物語なのですが、同時に言葉の力もすごく感じました。結ちゃんが心を込めて紡ぐ言葉は、言霊が宿るように、ときに強い力を持ちます。
そしてこの物語自体にも、そんな力が宿っているように思えてなりません。丁寧に磨き上げられたやわらかくも芯のある筆致から溢れ出る愛のこもったオーラを、ぜひ皆様も浴びに来てください。
あったまって、ほぐされる。効能たっぷりの温泉みたいな読み心地です。素敵です!
見知らぬ誰かと出会うこと、懐かしい人と再び巡り会うこと。
失くした大切なものを探すこと、そしてついに見付けること。
そうした出会いと別れを司る「縁」とは不思議なもので、
偶然とは言い切れない物語がそこに紡がれることがある。
主人公、結には「縁」にまつわる何某かの力が備わっている。
不思議な美女、金髪碧眼の瑠璃と和装帯刀の琥珀に導かれて
お届けもののアルバイトを始めることになった結は、次第に、
すっかり遮断していた外界へと目を向け、心を開き始める。
高校入学を目前に控えたある日、瑠璃琥珀堂に迷い込んでから、
結が大切なものに巡り会う度、結を取り巻く世界が動いていく。
そんな不思議で素敵な「縁」の物語に心が温まり、熱くなり、
ページを送る手が止まらなくなった。素晴らしくおもしろい。
人の目には見えない化生たちが個性的で、少しユーモラス。
個性的といえば、結を取り巻く人間もけっこう変わっている。
時にひどく邪悪なものに出会い、結は傷付けられてしまうが、
怯えながらもひたむきに顔を上げようとする姿がいじらしい。
作中に登場する料理がおいしそうなところもお気に入り。
ひらがなを多用した文章は見た目にもやわらかく優しい。
ほっと安らげる、少しふわふわして、どこか切ない物語。
続きも楽しみにしています。
ひょんなことから不思議なアルバイトをすることになった気弱な少女・結。他の人には見ることのできない化生のものと呼ばれる存在に届け物をすることで、縁を結んでいく物語。
雇い主である瑠璃と琥珀、クラスメイトの夏帆、どこかチャーミングな化生のものたちなど、個性豊かな登場人物に囲まれ、主人公の結は主に受け身の姿勢で事件に巻き込まれていきます。
家族の顔を知らない、友達と呼べる相手もいない、自分に自信が持てない——最初の頃の結は、多くの欠落を抱えています。しかし戸惑いながらも勇気を持って一歩を踏み出すことで、たくさんの縁を結ぶことができます。
思うにこれは、周りの人々や化生のものたちの絆をつなぐと同時に、結が自身の中の欠落を埋めていく物語、なのではないでしょうか。
物語を紡ぐ文章も、とても良く練られていると感じます。
独特だけれどすとんと腑に落ちる言い回しの比喩表現や、ひらがなが多く柔らかい文の中に時々現れる難しい漢字の名詞など、目に飛び込んでくるそうした文章の表情が、この物語の少し不思議な世界観を形作るのに一役買っています。
読み手の心をほっこりさせる、素敵な物語。続きも楽しく拝読いたします。
「こんがらがって」しまった縁の糸が、様々な人たちとの出会い、結びつきで、するすると温かく、ほどけていく……。
それは、二人で食べるパンの味で。寂しい気持ちにとらわれた日に、ふわりと出迎えてくれた笑顔で。一歩を踏み出す、ささやかな勇気で。
誰もが時にとらわれ、「こんがらがって」しまう人の縁が、世界を円く、やわらかに包みこみ、一人の内気な女子高生を、その内側へ誘います。
縁を繋ぎ、結び、結ばれながら、導かれるように進む先で、どんな景色が見えるのか。
主人公と一緒にゆっくりと歩きながら、それを追いかけた読み手の心も、きっと、じんわりと温まるはず。
やさしい物語でした。ぜひ、ご一読ください。