kalaviṅka

作者 望月結友

サイバーパンク×摩天楼×インド神話! 才媛は歌声の翼で電脳空間を翔ける

  • ★★★ Excellent!!!

クレアの満ち足りた少女時代は突如として終わりを告げた。
連邦捜査局に勤める勇敢な父、脳科学の研究に従事する母、
クレアが気に掛けてやまない義理の妹、そしてクレア自身。
新興宗教が引き起こした自爆テロがすべてを奪っていった。

物語は、機械化躯体を得て生き延びたクレアが捜査官となり、
配属先でバディのダニエルと出会うところからスタートする。
ニューヨーク市マンハッタン区、ミッドタウンの中心にある
連邦捜査局国家公安部のテロリズム対策課がクレアの配属先だ。

車椅子と介護ガイノイドの介助によって生活を送るクレアは、
電脳空間における指示や操作の全てを「歌声」でおこなう。
その独特で美しい仮想現実での立ち居振る舞いゆえ、彼女は
古代インドの伝説上の天鳥「カラヴィンカ」と渾名されている。

カラヴィンカの名にも表れる通り、古代インドの神話と伝説が
サイバーパンクである本作に奥行きと風合いを加えている。
多様な人種と文化と宗教が混一し切ることなく同時に存在する
ニューヨークシティならではの情景も、その背後にうかがえる。

繊細で正確な文章が描き出す絵の美しさに惹き付けられる。
現実と拡張現実、仮想現実が層を為すクレアの戦場は勿論、
歌姫を夢見ていた少女時代の残像を留める静かな日常風景や、
うざいおじさん然としたダニエルとのやり取りがまたいい。

ブルックリン橋で起こった大型トラックの事故を発端として、
違法アンドロイドの存在が発覚し、背後の闇が見え始める。
古代インドの悪鬼に名を借りた敵の正体、クレアとの因縁、
忌まわしい新興宗教が成した試み、助けたい命があること。

「デジタルデータは愛を表現するか」

表紙で投げ掛けられたその問いに、どんな答えが用意され、
苛酷な運命を背負うクレアと義妹シュリがどう生きるのか。
悲しみの果てに優しい結末があることを祈らずにいられない。
祈りながらも、彼女たちの残酷なカルマに魅了されてしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

その他のおすすめレビュー

馳月基矢さんの他のおすすめレビュー 351